お笑いコンビ・次長課長の一人、河本準一の母親が生活保護を不正受給しているのではないか、という問題。長い間無視を決め込んでいた河本でしたが、昨日涙の記者会見行い、その冒頭では30秒間頭も下げてみせることで、一応の決着をみました。
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きちんとした謝罪の効果は素晴らしいですね。
先日までの論調とはうってかわり、今では河本準一をを擁護する書き込みが急にネットで増えていて、驚きました。twitterで「河本準一」をキーワード検索すると、出てくるわ出てくるわ。「彼は悪くない」「何が問題なの?」というコメントが多数みつかります。
この大きな流れを作ったのは、松永英明氏のブログ内の記事「
河本準一氏叩きで見失われる本当の問題 」でしょうか。はてなブックマークがあまりに多いので、最初は吉本や電通が、河本を擁護するためのステマかと思いましたが、賛同者のIDなどを確認すると、そうではないようです。
松永氏の記事を整理すると、以下のようになるでしょう。
① 母親の病気をきっかけに生活保護が始まったが、河本の収入が数年前に上がったことをきっかけに援助が開始された。そして生活保護の必要がなくなったので生活保護を打ち切った。どこにも問題はない。
② 河本の収入は不安定。生活保護中止をなかなか切り出せないのは当然。
③ 母親と良好な関係だからといって、親に援助をして当然というのは、筋が違う。それは道徳・倫理の問題だ。
④ 近年親によるDV、放任が問題となっている。援助を受けるべき人が、援助可能な人が親族にいるために、生活保護を受けられない世の中にしてはいけない。
これを読んで、すっきりしないものを感じました。いや、そうじゃないでしょ、と。
そもそも河本が責め立てられていたのは、不法行為の疑いがあったから、ではありません。高額所得者である彼が、母との美談で本まで書いた彼が、母親に満足に仕送りをしていなかった、というモラルの面に問題があると多くの人が感じたことが、騒動の発端でした。
彼に不法行為の疑いがある、とをネットユーザーの一部が言い出し、国会議員が出てくるほどの騒動に発展しました。それは確かに解決しました。なにしろ立法府である国会の議員2人が、河本準一の母親の生活保護不正受給問題をこれ以上追求しないと明言し、吉本側の弁護士が、彼には不正行為はないと主張しているのです。今出揃っている材料では、彼に不法行為があったとは証明されないということなのでしょう。
でも、不法行為疑惑は議論の発端ではありません。道義的責任を果たしていないことだって、立派な「不正」でしょうに。
河本の母親が10年以上生活保護を受けていたこと、彼の活躍はすでに5年にもなること、彼の母親が生活保護の停止を決めたのは、週刊誌をきっかけにネットで騒動が大きくなった5月になってようやくであることを、松永氏が記事で触れていないことはともかく、議論の一部が解決されたから、問題はすべて解決された、と強弁することには、問題のすり替えではないのか、という憤りを感じます。
元々私にとって、河本は好きな芸人の一人です。
「
吉本自体にペナルティーを 」という記事でも書きましたが、彼が『一人二役』という本を書いていることを知らなければ、それほど怒りを覚えませんでした。
別に、彼が親に援助をしていなくてもいいのです。親だっていろいろです。子供に自分の価値観を押し付ける親、虐待する親、依存する親など、変な親はたくさんいます。特別な才能を持つ芸能人の親なんて、特にひどい親、エキセントリックな親が多いものです。そんな親を養えとは誰だっていいませんよ。
ところが、彼は『一人二役』という本を書いて売れています。親孝行キャラで売っているのです。母親を仕事のダシにしているのです。それなら、高額所得者となって真っ先にすることは、生活保護を受けている母親に仕送りをし、生活保護をまず、止めることでしょう。なぜそれをしないのでしょうか。母親との美談で金を稼いでいるのに、母親に生活保護を受けさせているのは大きな矛盾ではありませんか。
古い話になりますが、江角マキコは年金未納でとても叩かれました。彼女が国民年金の収納率アップを図った広報のイメージキャラクターを務めていたからです。偽善で金儲けをしたら、批判の的になるのは当然です。河本も同じですよ。
島田紳助というクズ芸人が以前いました。私は彼が心底嫌いですが、その理由は、彼が勝谷誠彦の女性マネージャーを、テレビ朝日局内の部屋に連れこんで鍵をかけ、彼女の頭を拳で4、5発以上殴り、髪をわしづかみにして壁に叩きつける……という異常な暴力をふるいながら、抜け抜けと法律相談所の番組の司会を続けていたことです。
井上ひさしという作家がいました。『吉里吉里人』のような優れた作品を残しましたが、憲法9条の護持を訴え続けたことでも有名です。しかし、彼と、それをとりまく人々を今でも信用出来ないのは、彼が元妻に肋骨を折るような暴力を長年ふるい、それが大きく週刊誌で取り上げられるようになった後も、9条の会の連中が、彼を支え続けていたからです。
年金が未払いなのはしょうがありません。暴力衝動を抑えられないのも仕方ありません。親に援助をしないのも、仕方ありません。誰だって、自分が可愛い、エゴイストの部分を持っています。弱い部分も持っています。欠点もあります。しょうがないですよ、人間だもの(by
じゅんを……じゃなかった みつを)。
でもそれなら、せめて、最低の倫理として、正義面をするのはやめなさいよ。
年金の広報の仕事は、来た時点で辞退しなさいよ。
法律相談所の司会は、暴力事件を起こした時点で降板しなさいよ。
非暴力を訴える9条の会の呼びかけ人になることは、「自分にはその資格はありません」と言って辞退しなさいよ。
親に生活保護を受けさせ、満足な仕送りをしないのならば、親をダシにした美談を本にすることはやめてくれ、テレビで親に感謝を表明するのは止めてくれ、孝行キャラで売りだすのは止めてくれと、強く強く願うのです。
どしてこんなに厚顔無恥でいられるのか不思議です。親の面倒をみるつもりがないのならば、普段から、「親と自分は無関係です」と宣言すればいいのです。その代わり、世間はその人を軽んじるでしょう。それなりの扱いをするでしょう。「それでもあなた評価する」と言ってくれる人は、一握りかもしれません。でも、でも、仕方ないじゃないですか。自分が選んだ道なのだから。
世間には評価をしてほしい、でも義務は負わない……そんないいとこどりの人生など、この世にありません。
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