日本と韓国が揉めに揉めています。
今回一番の争点となっているのは竹島問題。オリンピックの開催期間中に韓国大統領が竹島入りして自国の領土であることをアピールし、なおかつ日本の天皇に土下座を要求したことから、日本の世論は対抗的にヒートアップしました。
お互いに感情をつきつけ合って、いまだ解決の糸口は見えていません。
私は領土問題というのは、隣家同士の土地境界線の争いと同じで、そこまで感情的になる話でもないと思っています。
まともな人間同士ならば、鍬と鎌を持ちだして争うような前近代的な争いはせずに、司法書士を交えて冷静に応対するでしょう。同じように、両国も国際的な慣習などにもとづいて、二国以外の冷静な第三国を交えたりしながら、粛々と解決しようとお互いに努力すれば、決して解決できない話ではないはずです。
竹島問題が隣家同士の土地の境界問題に例えられるならば、日本と韓国の間の近代史もまた、家同士の関係に戯画化することができるでしょう。そうすれば、なぜここまで両国間の問題がこじれるのかが、わかりやすくなるかもしれません……。
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始まりは明治初期です。
日本さんちと韓国さんちは隣り同士ですが、日本さんちの最近の心配は、韓国さんちの家庭がとても滅茶苦茶なこと。韓国さんちのご主人はギャンブル好きで、奥さんはヒステリック。夫婦仲は最悪で、子供たちはほったらかし。家は貧しく、家庭崩壊寸前でした。
日本さんちのご主人の懸念は、二軒隣と向かい三軒にヤクザ関係者が住んでおり、隣家の窮状につけこんで土地ごと乗っ取られるのではないか、ということ。日本さんちのご主人にとっては、隣にヤクザが越してくるかどうかの瀬戸際。毎日がヒヤヒヤ物です。
そこで日本さんちのご主人は、韓国さんちに「しっかりしろ!」とハッパをかけて、家庭の立て直しを図りますが、二人の夫婦仲が悪いため、日本さんちの言葉は届きません。それに、すぐ隣りの人間に言われると、余計に癪に障るということはありますよね。分かっちゃいるけど、気持ちは素直になれませんでした。
段々と韓国さんちの夫婦喧嘩はヒートアップしていきます。奥さん、自分の立場が悪くなると、近隣の質の悪い連中や、実家の親を家の中に連れ込んで、自分の我を通そうとします。韓国さんちの中はいつまでもゴタゴタしていて、日本さんちでは、諸悪の根源は、あの奥さんだろう、という結論に達しました。
とうとう思い余って、闇夜の夜に、日本さんちのご主人と韓国さんちのご主人は共謀して、奥さんを殺してしまうのです。
ところが韓国さんちのほんとうのガンは、ご主人だったのかもしれません。ギャンブルは止まず、奥さんの実家にもヤクザにも借金をこさえました。とうとう韓国さんちに、ヤクザが大勢乗り込んできます。日本さんちのご主人、彼らから韓国さんちの家を守るために、大喧嘩をします。
ところが、ヤクザを散々に打ち倒したのをいいことに、日本さんちのご主人、家庭裁判所に韓国さんちのご主人を禁治産者にするように請求、今後は自分が韓国さんちの家の管理をすると宣言しました。
これはひどい……韓国さんちのご主人は、愕然とします。
思えば自分の妻を殺したのも、日本さんちのご主人と共謀してのこと。俺一人の意思じゃない。よくよく考えればあの妻も、昔は可愛かった……。
腹に据えかねた韓国さんちのご主人、思い余った日本さんちのご主人に襲いかかり、その右目をくりぬいてしまいました。
日本さんちのご主人は、怒り心頭です。地のしたたる右の眼窩を抑えながら、
「ほら、こいつはやっぱりおかしい奴だった!」
ご主人を監獄へと送り、自分は韓国さんちの子供たちを養子として迎え、土地を自分名義にして、同じ日本一家として、再出発することにしたのです。息子たちの意志は無視して。
元・韓国さんちの子供たちにとっては面白くありません。義理の父親は、確かに子供たちのためにあれこれと世話を焼いてくれます。食事もよくなりました。家の中も綺麗になりました。学費を払ってくれ、以前は思ってもいなかった大学まで出してくれました。
でも、日本さんちの実の息子への扱いとは雲泥の差です。しかも義理の父親は、ことあるごとに、
「向こう隣の家の舎弟連中よりも、いい暮らしをしてるだろ? だいたい、お前らの元の親父はどうしようもない奴だった。お前も努力しないとああなるぞ」
とネチネチ説教するのでたまったものではありません。
それに、日本さんちのご主人、元々ヤクザ嫌いを公言していたはずだったのに、いつの間にやら渡世人になり、町内の顔役になっていました。さらには韓国さんちの娘を妾にしてしまう、といういい加減なことを裏でやっていたのです。そして酔えば、
「ヤクザを町から追い出してえなぁ」
とくだを巻きます。そのような生活が、数年にわたって続きました。
両家の子供が成長した、ある日のことです。日本さんちのご主人は、乾坤一擲の大勝負に出ます。以前から目の上のたんこぶだった、向こう三軒のヤクザを町内から叩きだしてやると息巻いて、カチコムことに決めたのです。
日頃のお互いの鬱憤も溜まっていたのでしょう。町中を巻き込んだヤクザ同士の大抗争となります。
最終的には日本一家は戦いに破れ、一家の大黒柱はとうとう帰らぬ人となってしまいました。そして、警察から命じられた日本一家の解散命令。
日本さんちと韓国さんちは、再び別れ、堅気として両家を再興することになりました。
その後、韓国さんちの家は、向こう三軒のヤクザの代理戦争の舞台となり、子供同士が骨肉の争いを始め、兄と弟が土地を割る騒動となるなど辛酸を舐めましたが、最近は小康状態を保っています。
そして、弟さんの出来がなかなかよく、元ヤクザで今は実業家の向こう隣の家や、隣家の日本さんちの長男の応援もあり、近年は財産を蓄えて、なかなか羽振りのいい生活を送るようになりました。
ところが、感情的だった母親譲りなのか、それとも義理の父親から受けた屈辱がいまだ忘れられないのか、日本さんちに何かしらと嫌がらせをするのが止まないのです。
「そりゃぁ、親父は『同じ息子だ』と言いながら、露骨に俺たちだけをかわいがってたんだ。申し訳ないよ」
と考える日本さんちの気弱な長男は、韓国さんちの家庭が実は火の車だと知っているので、自分の家もガタがきているのに、隣家の応援をやめません。
「俺は、親父を尊敬している。昔悪いことしてたとしても、その頃は周りもワルばっかだったじゃねえか。あの野郎、親父の恩義を忘れやがってただじゃおかねえ」
という次男。でも、次男はヤンキーなので、日本さんちの中ではあまり評価されておらず、どちらかといえば長男の意見が家の意見となっています。
韓国さんちでは、兄も弟も、昔のトラウマを思い出す度に腸が煮えくり返るものの、かといって今更ヤクザになることもできずに、ただただ、日本さんちの垣根にションベンを引っ掛けたり、垣根を越えて石を投げたりすることでしか、ささくれだった気持ちを落ち着かせる方法を知らないのです。
最近は彼の家の周りには、
「隣の日本一家は元ヤクザです。うちの父は彼らに騙され、母は彼らに殺され、姉は犯されました。絶対に許しません!」
というような極太の、電波系の文句がズラズラと書かれた立て看板が立ち並ぶようになりました……。
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さて、果たして、そんな両家が和解をする日は来るのでしょうか。
……ぼかぁ、書いていて、こりゃ、しばらくはムリだと思いましたね\(^o^)/オワタ
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