人間いかに生きるべきか、この世に生を受けた意味とはなんぞや? などの疑問がふつふつと湧き出していたあの日。答えを探してあてどもない読書の旅へ出発しました。
読む前から、解答がないことは分かっていました。
たった一つの解答があるのならば、すでに人類はそのひとつの宗教を信仰するか、ひとつの哲学を後生大事に抱えているはず。答えがないからこそ、様々な思想がこの世に蔓延し、何百という新興宗教が生まれ、何万という自己啓発書が書かれ続けているのでしょう
解答がないことは分かっていながら、それでも私がその手の本を読み続けたのは、「自分にとっての最高の思想」ならば、いつかみつかるかもしれない、と思っていたからでした。
人類にとっての最高の宗教や哲学はないかもしれませんが、誰かにとっては最高であり、その人の運命を決定づけた哲学や宗教はあります。狂信者は、たったひとつの宗教のために命を捨ててもいいとまで思いつめます。
この「私」にとって、死ぬに値するような、納得できる思想が、どこかにあるのではないか……と考えたのでした。
まあ、未だにそんなものに出会っておらず、徒労の日々を過ごしてきたわけですが、
★ キャリアポルノは人生の無駄だ
という身も蓋もない記事を読みまして、寒気がしました。
「東大を首席で卒業してハーバードに行って何チャラというグローバル(棒)企業のなんとか戦略マネージャーをやっている」
「超有名戦略コンサルティング会社のなんとかコンサルタントだ」
「16歳で大学を卒業した、ガレージから操業した企業を数千人の企業に育てた」
という「意識の高い学生」とか、「ちょっと頭の弱い大人」がウハウハと大喜びするキーワードが満載です。
しかしそもそもそういう本にでてくる人は実生活ではあれだったり、本業がぼろぼろで業界では相手にされないから素人向けの本を書いて生活している人がいたりするんですがね。だって売れっ子だったらそんな素人向けの本を出して宣伝する必要ないんですから。営業しなくてもお客さんが来ますので。おっしゃるとおりで、筆者の口汚い文章にさえ目をつぶれば、至極まっとうな意見で、耳が痛いです。この文章は主に自己啓発書を読んでいる人々に向けたものですが、哲学や宗教を学んでいる人々に向けたものでもある、と考えてもいいでしょう。
で、まあ何がいいたいかというと、ハーバードも戦略コンサルもガレージから操業してどう、も我々には関係ないんですよ。多分勤労人口の99.99999%には関係がない。
ここでは、自己啓発書を書くような人間はスーパーマンか、スーパーマンにあこがれている人間を食い物にする人間だ、という事実を喝破しているのですが、私が前述した
>>その人の運命を決定づけた哲学や宗教
を持ちえた人もまた、一種のスーパーマンであると言えましょう。自分もまたそうだと思いながら読むのと、
「彼らは一種の選ばれた人だ」
と斜に構えて読むのとでは、これからの読書態度も自ずと異なります。いや、そもそも読書をする意味すら、もうないのかもしれません。
そもそもそれほど脳の作りが人よりもずば抜けているわけでもない自分が、何らかの解答に行きつくと考えてムダな読書をしてもたかが知れているというもの。そんなことよりも、目の前にいる女性を幸せにする方法を探り、試行錯誤しながら模索していくことの方が何よりも大切なのです。
人生とはなんぞやとか神とはなんぞやなんて疑問を持った人は、高尚なことを考えていると思い込み、本業が身に入らずに目の前のことをおそろそかにして、あたら有意義な人生をムダにしてしまうことが多いものです。
何の後ろ盾もなく会社を興して数千人の組織に育てるって、常人じゃ無理なんですよ。遊びも何も犠牲にして働ける気力と体力、それに、「絶対に金が欲しい」「俺は組織をでかくしたい」という怨念がなきゃ無理なんですから。ゴーストライター、ねぇ。
そんな怨念じみた意欲がある人ってね、普通じゃないんですよ、普通じゃ。近所にいたら町内会の99.899%の人に「あいつおかしい」と言われているタイプです。伝記は自慢本だから、創業者の怨念満々の部分なんて書かないですよ。金だしてゴーストライターに書かせてんだもの。
経営者をいかに立派に語るかは、ゴーストライターの腕の見せ所です。
創業者たちを大変立派な人物を描く伝記作家に、ご縁がありまして話をうかがう機会が以前にありました。彼にそのコツを聞いたことがあります。
Q「世間で評判の人物であっても、実際に会ってみるとそれほどでもなく、頑固で短気でわからず屋で社内の鼻つまみ者だったりししませんか?」
A「そんな奴らばっかりだよ。経営者と人格者は違うからね。むしろ一代で成功した創業者なんて、もっといい女を抱くために社会的地位がほしい」とか「カネをもっと稼いで女をつかまえたい」とか、性欲の塊のような連中がほとんどだから、人格者とは程遠い事が多い。でも、人前に出ることが多いから、それなりに自分を飾ることには長けている。でも一皮剥いたら、野獣のような人間ばっかりだ。人を騙すことにも躊躇しない。どっかのネジが外れている」
Q「それでいながらどうしてあなたは、彼らをああも格調高く書けるのですか?」
A「人物をよく観察して、歴史上の有名人の誰に近いか考えればいいんです。特に欠点に注目する。女好きだったら豊臣秀吉や伊藤博文、短気だったら織田信長などを選び、それに擬して書けばいい」
なるほどねぇ、と感心し、面白い話だと思うと同時に、こうして虚像を量産しながらそれを恥じないこの歴史作家にうんざりしたものです。
本当の生活が辛いから。人生とはなんぞや、という問を高尚なものと思いなすよりも、今目の前にあることに全力を注ぎ、自分に与えられた資産を使っていかに豊かで幸せな生活を作りうるか……そのことの方が大切だと、この記事は現実をつきつけてくれます。
日本人は「いつか君も凄い人になれる」「ハーバードではこうだ」というヤクにお金を払って、永久に終わらない残業から逃避しているわけです。
本当の生活や仕事が辛いから。
ヤク中との違いは、腕に注射器の跡があるかないかです。
早く目を覚まして、足が臭い部長をヨイショすることから始めましょう。
ドラッガーなんて便所紙にもならないんだから。紙が固いから痔になりますよ。
自分のことだけ考えている人間は、自分である資格すらない。~ユダヤの格言より~
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