ようやくこのシリーズもお終いです。後半になるに従って、この著者の恋愛の好みを聞いているような気になってまいりました。一瞥しただけだと、
「いいこと書いてあるな」
と思ってここで紹介し始めましたが、そのためにいく度となく繰り返して読むうちに、著者の独善ぶりに鼻白む思いがしてきました。
このところ本屋に書籍が平積みになっていることでも話題の里中李生を彷彿とさせます。
さて、本題です。
㊸ 恋愛は内密に、結婚は大っぴらに
草花でも双葉のうちは風の当たらぬ苗床で育てねばならぬ。
しかし、いよいよ花を咲かせ実を結ばさせる時がくれば、適当な日光と風がなければ生育しない。
恋愛もまた草花のやうに微妙なものである。
結婚式は盛大にあげよ、ということでしょうか。ふーん。
㊹ 恋愛と結婚とを混同するな
古人曰く「結婚の美酒は貞操の栓によって味を保つ」と。夫婦の営みは結婚してから行いましょう、ということでしょう。ただ、それを楽しみにして結婚後、飽きて我に返って、結婚自体に幻滅してやがて離婚を考えるということだってあるでしょう。結婚前にある程度経験して、冷静な気持ちで結婚をするかどうか決めた方が離婚の危険が少ないようにも思うのですが、いかがでしょう。
恋愛時代において、余りにも早く栓を抜くと、結婚時代になって味も香もない気の抜けた酒を飲まねばならぬ。
二度と訪れぬ青春の香に酔いたいのは誰しも同じだが、そこが忍耐の仕所だ。
㊺ 相手を不幸にするな
相手を不幸にしておいて、どうして自分一人が幸福でいられやうか?「愛さえあれば様々なことが許される」
例え断腸の思いをしても、絶たねばならぬ絆は絶つべきである。
先生と生徒の場合、主人と召使の場合、道ならぬ道の場合等、無理な恋愛はともすれば相手を不幸にし易いものだ。
という価値観が広まっている日本ですが、道義に反する行為は多くの人々を不幸にします。幸せはいくつもの義務を果たした上に生ずることを忘れてはいけません。義務のうちの一つが、社会の中で禁忌と言われることを犯してはならない、というもの。
「ならぬことはならぬのです」
㊻ 先入観に捉われるは愚なり
某博士令嬢、某大将令嬢と聞いただけで、もうすぐにその少女を有難がってしまう軽率な人がいる。他人のスペックにやたらとこだわる人間がいます。これが年齢や職業ならば相手の人物像を把握する上で役立つでしょうが、さらにこだわる昔の上司のことを思い出すと嫌な気持ちに。
そんな人にかぎって、その少女の実質がどんなものだか、よく見極めもしないで、無我夢中で恋愛に焦る。
その結果は一生涯の悩みの種を背負い込むことにならう。
彼女が案外にも低脳であったり、不良少女だったりすると云うのは極端な例だが、さうでなくっても、人格、教養、趣味の点で、自分の相手としてどうかと思うと、後になって次第に気づいたところで後の祭だ。
こんなことは誰でも心得ていると、云ってしまえばそれまでだが、それでいて、案外誰でも簡単に誤魔化されるものだ。
「学歴はなんやねん?」
「おまえの父親はなにしてるねん?」
彼がかたくなにこだわるのを聞くと、その人のゲスな思考が垣間見えてやるせない思いにとらわれたものです。そんなバカな人間にならない様に気をつけたいものです。
㊼ 圧迫される恋人を持つな
いつも、圧迫されているやうでは生活が面白くないことは理の当然だ。「(一緒にいて)圧迫される恋人を持ってはいけない」
のみならず、意気衰えて伸びる可き才能も伸ばすことが出来ず、発展すべき事業も行き詰まりとなる。
極度に気の強い者、才智弁舌が自分よりも優れていて、常にやりこめられてばかりいるやうな者、それから体力の点でも自分を圧迫するやうな者とは恋はすまじきことだ。
ということでしょう。一緒にいると何をしても文句をつけてくる人間がいます。そのような人間と一緒にいると、だんだんと自分の居場所がなくなったように感じてきますので、気をつけたいところです。
㊽ 良き友達をもたぬ恋人は面白からず
「朋友の善悪によって、その人を知る」とは古い諺だが真理はいつまでも真理だ。いろいろな友だちがいる学生時代と異なりまして、社会に出て10年近くなると、価値観が共有できる友人関係のみが残ってくるものです。友情よりも家庭や職場の人間関係が優先されるようになるために、それ以外の場所で人間関係を構築することができにくくなります。そうしますと、その人の個性が友情に如実に現れるようになります。
酒が嫌いな癖に酒飲みの友達とバーばかり廻り歩いているわけはない。
相手の口からの出任せを信ぜず、そつとその友達を観察すると化の皮はすぐはげる。
気をつけたいものです。
㊾ 「女性の味方」を信用するな
私は女性の味方ですなどと御婦人の前で臆面もなくまくし立てる人ほど当てにならぬものはない。49ヶ条の最後を飾ったのが、この条文でした。
本当の女性の味方ならば、婦人の前でぺらぺら喋るようなことはしない。
黙っていて知らぬ間に親切を尽くしてくれるものだ。
自称「女性の味方」にかぎって我が侭で不親切な男が多い。
私は、とあるボランティアに参加したことがあります。弱い立場の女性を救うことを標榜した、若干フェミニズムの入った団体でして、そうとはしらず、私は単純にホームページの説明文を読みまして、
「弱者保護の団体なんだな」
としか思わず気軽な気持ちで参加したのです。
主催者およびその取り巻き達は一見「良い人」だったのですが、見かけだけだったことが、後になって分かりました。気の弱い人間には威圧的態度で臨み、他人の恋人を平気で口説き、それを周りが注意しないなどの、人間的におかしな人間が多数生息していて、幻滅しました。
人間は、普段語っていることや行なっていることだけを表面的に観ていても、相手の人間性を知ることはできないようです。結婚相手もまた然り。よくよく相手を観察する必要があります。
加えて、自分自身の価値観も掘り下げておくこと。その上で相手と一緒の生活を幾度となくシュミレーションしてみて、そこに幸せな生活が待っているのならば、結婚しなさい、というのが、この最後の条文に込められたメッセージなのでしょう。
ようやく終わりました。49条は長かった!
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