2013年3月27日水曜日

もしかしてあなたは「英語ができない人」なのかもしれない 上

楽天株式会社の三木谷浩史社長が3年前に発表した「英語社内公用語化」は、社会に大きなインパクトを生んだ。

ただ、いくら一人のカリスマががんばったところで、社会がそれを許さなければ掛け声倒れに終わるもの。ところが、様々な軋轢を生みながら、楽天は英語社内公用語化の看板を下げようとはしなかった。世間からそこまで強固な反発を受けなかったからだ。

これを見習った多くの企業が、雪崩を打ったかのように、TOEICのスコアアップをあからさまに配下社員に求めるようになったようだ。昨年から、大手企業の多くが、奨励金を出したりスコアの報告を社員に求めたりして、社員の英語学習を求めているという実態が「プレジデント」などのビジネス誌や新聞などで報告されている。

この動きにそって、大勢の人が今まで以上に英語学習へ熱心に取り組むようになった。英語教材を買ったり、語学専門学校に通ったりしているのは、ほかならぬあなたかも知れないが、すこし待っていただきたい。

もしかするとあなたは「英語ができない人」である可能性がある。


ディスレクシアという障害
1884年、ドイツの眼科医であるルドルフ・ベルリンによって命名されたこの障害は、日本では「識字障害」などという用語で知られている。

文字通り、書かれた文字を言葉として認識できない障害であり、普段の生活、会話はスムーズに行えるのに、こと、文字を読むことに関しては大変な困難を必要とする症状のことだ。

「知的障害でしょ? 知能の発達に問題があるから、言葉が喋れない人のことだよね」

そうではない。会話は普通にできるし、頭の回転にも問題はない。ところが、文字を読んだり書いたりすることが、圧倒的に下手なのだ。

ディスレクシアの人には、普通の人にはこう見える文字が、
こう見えてしまうという。
特定非営利活動法人 EDGEホームページより

その原因は、まだはっきりしていないが、普通の人が言語処理のために使用する部位とは異なる脳の部位を、ディスレクシアの人々が利用しているせいではないか、などと言われている。

英米圏には何らかの識字障害に悩まされている人が、全体の15%もいるというのだから、驚くほど多い。約7人に1人。

有名人ではトム・クルーズがいる。彼は文字が読めないために、台本を覚える際には、知人に台本を代読してもらったものを録音して、耳で聞き直して覚えて俳優生活をやり過ごしてきたのだそうだ。オーランド・ブルームもまた、ディスレクシアだ。彼は幼少期にどれほど苦労をしたのかを、ロックフェラー大学で語っている。


ディスレクシアは悪いことばかりではない
もっとも、ディスレクシアという識字障害は、悪いことばかりではない。

ディスレクシアの症状を示す人々には、特殊な能力の持ち主が数多くいることが知られている。なぜなら、ディスレクシアは他人と異なる脳の別の部分を言語処理に使用しているからだ。

だからだろうか、他人と発想が異なる。着眼点も異なることが多い。彼らは時には、視覚を音として認識したり、音を聞いた瞬間に色が思い浮かぶような、共感覚という能力を併発していることもある。このために、一般人とは異なる感性を持ち、一般人には及びもつかない発想をすることができる。

ディスレクシアと診断されているのは、上記の俳優だけではない。スティーブン・スピルバーグは2007年、ディスレクシアと診断されたことを学習障害を持つ若者向けのサイト「Friends of Quinn(フレンズ・オブ・クイン)」のインタビューで明かしている。また、小学校を中退したエジソンも、ディスレクシアではなかったか、と考えられている。

人類に貢献する多大な業績を挙げた人々に占めるディスレクシアの割合は、かなり高いようだ。


自分に関係あるの?
さて、ここまでディスレクシアについて説明してきたが、読者の中には、
「識字障害なんて、他人の話だ。自分には関係ない」
こう考える人も多いはずだ。日本語を読むのに、何の支障もない。だから、識字障害は自分には何ら関係のない症状だと。

実際、日本では識字障害者の割合は、程度の低い者を含めても、5%にとどまるという。

ところがこれは、日本語の特性に起因するものである可能性がある。あなたが日本語を使用しているから、ディスレクシアであることが分からなかっただけ、なのかもしれない。

あなたの識字障害が、顕在化していないだけである可能性があるのだ。
(明日に続きます)
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