本日は、そのような世界の様々な歌をご紹介したいと思います。
1.モンゴルの歌(ホーミー)
モンゴルに伝わる「ホーミー」という唱法では、一人の人間からニ種類の声を一度に出すことができます。喉を緊張させ、舌端の裏側で喉奥を塞ぎ、声を喉に共鳴させることで、喉奥から出るしゃがれ声と、口笛のような高音の二種類が、一人の人間の口蓋部から発生します。
2.イヌイットの歌(喉歌)
以前はエスキモーと呼ばれていたアラスカに住む先住民であるイヌイットたちの間には、音楽という概念がなかったそうです。しかし、子守唄などは存在しており、イヌイットからは「雑言」などと呼ばれていました。西洋の音階とはまったくことなる構造をしています。Wikipediaによれば、
叙唱のような歌い方という特徴があるそうです。
複雑なリズム編成
およそ6度間が平均の比較的狭い旋律的音域
旋律における長3度と短2度の傑出
起伏のある旋律線
3.ポルトガルの歌(ファド)
昔、元ちとせという歌手がデビューして魔もない頃に、テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」で取り上げられたことがあります。
「こんな歌声を聞いたことがない」
キャスターが彼女の独特の唱法に対してこんな感想を漏らしたところ、外国人コメンテーターが、
「ファドに似ていますね」
と指摘していたのを思い出します。
ファドとは「運命」を意味する言葉です。ポルトガルの酒場で歌われ、人生の悲哀、恋愛の悲しみなどを歌い上げます。その悲しい旋律が、人々の心に染み渡ります。
4.奄美の歌(島唄)
沖縄の歌はよく知られるようになりましたが、奄美の歌はまだまだ知られていません。沖縄の琉球歌謡が人生の喜びを歌ったものならば、奄美の島唄は人生の悲しみを歌ったものだと言われています。「ワダツミの木」を歌った元ちとせは、高校3年生で奄美民謡大賞を受賞しています。「花」を歌う中孝介は日本民謡協会奄美連合大会で総合優勝しています。奄美出身者の歌手の根底には、島唄があります。
紹介する動画は、「サムライチャンプルー」というアニメの一場面。海外で大変評価を受けているものです。
5.ピグミーの歌
アフリカ中央部に住むバカ族は、ピグミーという名で知られ、平均身長が150cmほどしかない民族です。彼らの歌の特徴は、様々リズムが混合するという点。3拍子と4拍子を混ぜたり、そこからさらにリズムが変わるのです。複雑なリズムを操ってそれに皆がついていくところ、さすがリズムの達人、アフリカ人ならではと言えます。
6.ブルガリアの歌(ブルガリアン・ヴォイス)
ブルガリアの民謡は、クラシック音楽とは異なる特徴があるそうです。ビブラートをかけず、裏声ではなく地声で歌い、不協和音を多用します。どことなく、仏教の音楽である声明に似ていて面白いです。
7.チベットの歌(声明)
仏教には様々な文化が内包されています。そのうちに一つが声明(しょうみょう)といわれる音楽のジャンルです。よく「お経を聞くと眠くなる」と言われますが、あれはお経の旋律にリラックス効果があるからです。声明には独特の音楽理論があり、チベットではそれをさらに発展させていきました。世界中にファンがいます。ホーミーにも似てます。
8.バリの歌(ケチャ)
これは有名ですね。中学校の時に音楽の授業で習った人も多いはずです。ところが、これは近世になって新しく作られた音楽であることをご存知でしょうか?
1920年代の後半、バリ島に住んでいたドイツ人画家が、バリ島観光振興のために、男声合唱のみで伝統神話を歌ってはどうかとバリ島の住民たちに提案し、それが現在も知られる「ケチャ」の原型となったそうです。
9.グルジアの歌
グルジアはスラブ、ペルシャ、トルコ等様々な文化が混合したために、お互いが交じり合い、ある部分では融け合い、ある部分ではそれぞれの特徴が残り、一風変わった音楽が根付いています。「雄鳥の鳴き声」(cockerel's crow)と言われる独特の唱法が混じったのを聞いた時、一瞬「え?」と思うこと確実。白人が当たり前のように東洋風の歌唱を行う様子は、世界の人々の多様性を実感させてくれます。
10.パキスタンの歌(カッワーリー)
イスラム神秘主義と訳される「スーフィズム」は、別名踊るイスラムとも言われ、音楽と大変縁が深いイスラム教の一分野です。音楽を聴き、回転しながら陶酔状態になることで、神との一体感を得ようとするその方法は、イスラムの中で音楽を発展させてきました。そこで歌われるカッワーリーは、スーフィズムの理想追求のために歌われており、一般庶民にも愛されています。
以上となりますが、いかがでしょうか。世界にある様々な音楽を、実際に現地で聞いてみたいものです。ちなみに、下記掲載のCDには、世界中の音楽が100曲収録されています。それが1,500円ほどで買えるのですから、いい時代になったものです。
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