養子縁組には2種類ある。特別養子縁組と普通養子縁組だ。
特別養子縁組は家庭裁判所によって厳格な手続きが行われるため、これはあまり悪用されない。逆に普通養子縁組の手続きは大変簡単で、必要書類に記入して印鑑を押して、各市町村に提出すれば終わり。
この2種類の縁組は、税法上で区別される。他人の財産を譲り受ける場合に、相続税を逃れるために便宜的に養子縁組をするケースが以前多発した。これを避けるため、今では相続税の控除対象となる養子を、実子がいる場合は1人まで、実子がいない場合は2人までに限定している。特別養子は実子と認められるので、普通養子は税法上の優遇措置の対象とはならない。
だが、それ以外、特別養子と普通養子の間には何も差がない。それどころか、普通養子には養親の財産を受け継ぐ権利だけではなく、実親の財産を受け継ぐ権利もあるのだ(普通養子縁組は、実親との関係を断ち切らないため)。その上、普通養子縁組はいくつも同時に行うことができるので、戸籍上は何十人もの「親」を持つことができる。
たかだか書類を提出するだけで、財産を手に入れるチャンスがある。たとえば最近増えている独居老人と仲良くなり、家に上がり込んで間取りを把握、彼らが留守の隙を選んで印鑑を盗み出して普通養子縁組の書類を偽造、市町村に提出しておいて、後は彼らが死ぬまで待つ、という行為を繰り返せば、数十年後には一財産築けることになる。
そもそも「養子縁組」という行為自体が滅多に行われるものでは無いはずなのに、日本全体で、現在8万件もの養子縁組届が提出されている、というのがおかしい。東京都内のある区では、不自然な養子縁組届が全体の16%にも達しているというのだから、ザル法もいいところだ。なにしろ1ヶ月の間に幾つもの養子縁組を繰り返すような事例が、実際に起こっているのだ。
しかし、市町村には書類に不備がない限り、受理しなければならないという決まりがある。どうしようもない。文京区は以下のような請願書を提出して国に法改正を求めたが、当時の政権を担っていた民主党からは完全無視された。
★ 養子縁組を悪用した犯罪を防止するために法の改正を求める意見書
戸籍に価値を置く人々は、このような戸籍の悪用はしない。するとしたら、戸籍に価値を置かない人か、戸籍制度自体を憎む人々だ。彼らは戸籍を"汚す"ことを躊躇しないし、それで利益が出るのならば、利用しない方がおかしいと考える。どのような人々が戸籍制度を憎んでいるのかは詳しく述べない。
★ 角田美代子容疑者に“戸籍ロンダリング”を伝授したのは誰なのか
かつて養子縁組ビジネスをしていた暴力団関係者が言う。「こんなこと、自分には関係ない」
「養子縁組ビジネスのいいところは、家族の問題にできるので警察の介入を防げるということだが、ほかにもう1つある。養子を組んだ人間同士で“共犯”になれること。勧めた多重債務者が今度はブローカーになって、ほかの多重債務者に勧めるなんてことも多い」
ということは、養子縁組の悪用を繰り返すということでファミリーの結束が強まり、巨大な犯罪集団へと拡大していったということではないのか。
という人、案外世の中を知らない。たとえばあなたが企業に提出した履歴書。これにはあなたの生年月日も筆跡も、時には印鑑さえも記載されている。これ一枚あれば、あなたの筆跡で書類を偽造して、役所に提出することが可能なのだ。
就職しようと思うような大手企業なら、まだいい。学生時代に履歴書を提出したバイト先は、それほど信用できるところだっただろうか? あなたを養子として登録し、後日あなたの家庭へと上がり込んで、あなたの家庭を崩壊させようと虎視眈々と狙っているような人は、あなたのかつてのバイト先に、いなかっただろうか?
個人情報保護が騒がれているけれども、中小企業では求人に応募してきた履歴書をそのまま保管しているところも多い。それが暴力団に狙われる。あるいは暴力団のフロント企業が、中高年向けに、履歴書を取り寄せるためだけに求人広告を出すケースもあると聞く。
一度自分の戸籍を取り寄せてみた方がいいかもしれない。あなたの戸籍に、誰かの名前がひっそりと書き加えられていないか、注意が必要だ。
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