2013年6月22日土曜日

ナンパ集団に話を聞いてみた

昨日の記事はアクセスが多くてびっくりした。ありがたいことだ。

今日はそれに負けないくらい面白い記事を書こうとしたが、とんと思いつかぬ。そこで、自分がオモシロイと思った、以前、東京駅の改札で友人と待ち合わせをしていたところ、目の前でナンパをしている人々に遭遇した話でも書いてみようと思う。

場所は東京駅の地下の丸ノ内地下中央口。

ぼんやりと人の流れを見つめていると、視界の端に、何やら男女が見つめ合っている姿が映った。

熱烈な告白
恋人同士がむつみ合っているのだろうと思っていたが、やや雰囲気が異様。通路の真ん中に正面同士で向かい合っている。


女性はフワッとした、森ガール風の軽めの服装。男は20代後半、メガネをかけた研究者のような、線の細いマジメそうな男。服装はジーンズにTシャツ、袖のやや短いジャケットを羽織っていた。
男の声に傾聴してようやくそれが、彼の一世一代をかけた告白だと知った。そのセリフがスゴイ。
「あなたを見た時に、私の胸に、ロウソクの炎のような温かいものを感じました」
「あなたをここで見失ったならば、私がこの世界にいる意味がないと思いました」
「私はずっと誰かのために生きたいと思っていましたが、それがあなたかもしれないと思ったときに、足が自然に動いていました。普段はこんなこと、しません」
「あなたのまっすぐな目を見た時に、あなたのことしか考えられなくなりました」
「とても魅力的で、頬のあたりがとてもチャーミングだと思う」
街でよく見かける、チャラい男のナンパとは違う。本当にその女性のことを真面目に好きなんだなぁ、ということが分かる、熱いセリフがトツトツと男の口から繰り出されていた。

普段はナンパなんかにひっかからなさそうな、社会人5年目風の女性も、じっと男性を見つめながら、うなずいたり首を振ったりしていて男の言葉に反応していた。女性の声は小さく、詳細不明。

やがて女性の「今は忙しいけど、また時間があれば、その時に」というセリフが聞こえ、男が名刺を渡し、女は丸の内ビルへと去った。男はその後姿をいつまでも見送っていた。

(いやぁ、いいもの見たなぁ。後でこのこと、友達に話してやろう)
と思っていたが、男の様子が変だ。

実はナンパ
女の姿が見えなくなった瞬間、すぐにきびすを返してまるで獲物を狩ろうとする猛禽類のような目で周囲を物色し始めたかと思うと、別の女性に声をかけ始めた。

(おいおい、さっきのあれ、ナンパだったのかよ)
私は呆れた。

男は何人もの女性に声をかけるが、立ち止まる人はほとんどいない。話を聞いてもらうまでが大変なのだろう。とすると、あの男が先ほどの女性と話すまでには、何十人もの女性に振られたということだろう。よくやる。

そこへ大柄な男が近づいてきた。この男が、白いワイシャツのボタンを3番目まではずし、金のネックレスをしているというなんとも言えない服装をしている。
(写真はイメージです)
「どう? うまく言っている?」
大柄な男は、快活に研究者風の男に声をかけた。

(ああ、彼らはナンパグループなのか……)
ようやく私は合点がいった。大柄な男が師匠格なのだろう。2人は話しながら、ある方向を見た。私も同じ方向を見ると、黒いラガーシャツを着た男が、女性に声を掛けているのが見えた。どうやら2人以外にも仲間が複数人、いるようだ。

2番目に現れた男の顔をじっくりと眺める(その男を仮にAとする)。口は半開きで大きな前歯がのぞいていて、決してかっこよくはない。長い茶髪で韓流スターを意識していそうだった。年齢は30代半ば、といったところ。

ネットに似た顔がいないか調べたところ、これを若くしたような風貌だった。
(写真はイメージです)
ただ、風格がある。口調、話し方が落ち着いていて、自信にあふれているのだ。なるほど、こういうところが女性にモテるのだろう。

これは面白い。このブログを御覧になっている方は御存知の通り、私は結構好奇心が強い。
★ 新規公開株で、詐欺師がだます手口 上
★ 人体実験のアルバイト あるいは治験体験談 ①

目の前で変わったものを見たら、自分で確かめねば気がすまぬ。年齢も異なり、共通点もなさそうな2人はいったい、どういうつながりなのか。

そこで、この2人組に話を聞くことにした。

ナンパ塾という存在
「すみません、物書きをしている者ですが……」(ブログを書いているのだから、嘘ではない)。
こう切り出して、今彼らがナンパをしているのを見ていたこと、そして、どういうコンセプトでこのような行為をしているのかを、尋ねてみた。

突然声をかけてきた私を、彼らはどこか不安な表情で見ていた。気持ちは分かる。ナンパという行為はある意味迷惑で、時に大変嫌われる。他の男性から喧嘩を売られたりすることもあると聞く。私とのトラブルを懸念していたのだろう。それに、見ず知らずの男から突然声をかけられたら、だれだって警戒する。

だが、彼らはナンパを繰り返しているのだから、見知らぬ相手にいつも声を掛けている側だ。まさか逆の立場になったときに、けんもほろろな態度は取れまい。

私が名前を名乗ったところ、Aも礼儀正しく名前を名乗った。
「僕たちは、ネガティブなイメージのあるナンパを、もっと明るいイメージのものとするために、グループで女性に声を掛けているんです」
とAは気さくに語りはじめた。

Aによれば、いわゆるナンパと彼らのナンパは異なるのだという。いわゆるナンパは、下心を隠して女性を騙してあわよくば夜のお供にしようとするものだが、彼らのナンパは、あくまで合コンなどのきっかけとするものであり、見知らぬ男女が出会う機会を増やすことがメインだという。
「女性がナンパを嫌がるのは、それを信じてついていった結果、危ない目に遭うことがあるためでしょう。私たちはそうではないことを示すために、丁寧に真面目に声をかけるようにしています。また、その場で強引に誘うことは固く禁じています」
なるほど。それがあの丁寧な話し方だったのか。他に心がけていることは?
「用事があるのに突然声をかけられるのは、女性にとっても迷惑です。その時に、女性に『この人と話して良かった』と思ってもらえるように、その人をとにかく褒めるように心がけています。たとえ失敗しても、いい印象を持ってもらえれば、声をかけた私たちも、ホッとします。お互いにとってWin-Winなのです」

でも、大げさすぎやしませんか?
「大げさのように見えましたか? でも、褒めるときには大げさに褒めないと、伝わりません。それに、非日常的な雰囲気を作ると、女性は次第に周りを忘れ、私たちの言葉だけしか聞こえなくなるのです」

何人くらいに声をかけるのですか?
「だいたい30人に声をかけて、ようやく1人と話せます。そこから出会いに持っていけるのは、10人に1人くらいでしょう」

Aさんの格好とこの方(研究者風)とは、随分ファッションが異なりますね。
「それぞれの個性がありますから。自分の個性を一番よく見せる方法は何かを考えるようにしています」

全員で研究しあっているのですか?
「いえ。受講料を払って、ナンパの技術を教えています。1ヶ月3万円です」

高い……私は絶対に入らないだろう。
Aによれば、ナンパをしているといろいろな妨害があるため、場所の選定に苦労するのだという。渋谷などではからまれることもあるという。それに比べ、恵比寿や東京駅周辺は意外な穴場らしい。

最後に、彼の主催する団体名を最後に教えてもらった。
「BMJと言います」
意味は?
「"B(バカ) M(モテ) J(人生)"の略です」

……ワロタ。
帰宅すると、確かにBMJという団体があって、そのサイトまであった。バカバカしいからリンクを貼らないけれども、いや、それにしてもびっくりした。

いろいろなコンセプトのいろいろな団体があって、真面目にバカバカしいことに挑戦している。こういうところが、都会の面白いところではある。

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