天才に一度も憧れなかった人はいないだろう。幼い頃は自分を過信しているために、自分もいつか天才となれるのではないだろうか、などと夢想する。
成長するに従って、自分の才能の限界を知り、あきらめる。
私もその口だが、実は、天才とは天才になる方法を若い内に実践していただけなのかもしれない。
★ 瞑想の核心部分の構造4
井筒俊彦のことを知らない人が多い。イスラム研究というマイナーな分野の研究者だからだ。しかし間違いなく、彼は日本史上でも有数の天才の1人だ。
私もその口だが、実は、天才とは天才になる方法を若い内に実践していただけなのかもしれない。
★ 瞑想の核心部分の構造4
井筒俊彦のことを知らない人が多い。イスラム研究というマイナーな分野の研究者だからだ。しかし間違いなく、彼は日本史上でも有数の天才の1人だ。
日本で最初の『コーラン』の原典訳を刊行し、ギリシア哲学、ギリシャ神秘主義と言語学の研究に取り組み、ギリシャ語、アラビア語、ヘブライ語、ロシア語など20か国語を習得・研究し、後期には仏教思想・老荘思想・朱子学などを視野に収め、禅、密教、ヒンドゥー教、道教、儒教、ギリシア哲学、ユダヤ教、スコラ哲学などを横断する独自の東洋哲学の構築を試みた。(中略)世界的に権威ある空前絶後の碩学であり、現代フランスの思想家の一人ジャック・デリダも、井筒を「巨匠」と呼んで尊敬の念を表していた。慶応義塾大学の元教授で、日本人でありながら、革命前のイラン王立研究所で教授を勤めていたという経歴は伊達ではない。
語学に堪能で、古今東西の様々な思想を縦横無尽に渉猟した彼の研究は、現代でも高い評価を受けている。
大川周明など日本人先駆者の細々とした基礎研究があったとはいえ、日本に全く知られていなかったイスラムの一大体系を、正確で緻密な理解により日本にもたらしたのは、ターヘルアナトミアを訳した杉田玄白や密教を日本にもたらした空海の業績に匹敵するかもしれない。
彼はその著『神秘哲学』の序文で、幼少時に父から命じられた独自の学習法について触れている。
★ 瞑想の核心部分の構造4
私はこの父から彼独特の内観法を教わった。というよりもむしろ無理やりに教え込まれた。もっとも彼は、その後に父から学んだ修養法からの脱却を図ってもいる。
彼の方法というのは、必ず墨痕淋漓たる『心』の一字を書き与え、一定の時間を限って来る日も来る日もそれを凝視させ、
やがて機熟すと見るやその紙片を破棄し、「紙上に書かれた文字ではなく汝の心中に書かれた文字を視よ、二十四時の間一瞬も休みなくそれを凝視して念慮の散乱を一点に集定せよ」と命じ、
さらに時を経て、「汝の心中に書かれた文字をもてあますところなく掃蕩し尽くせ。『心』の文字ではなく文字の背後に汝自身の生ける『心』を見よ」と命じ、
なお一歩進めると、「汝の心をも見るな、内外一切の錯乱を去ってひたすら無・心に帰没せよ。無に入って無をも見るな」といった具合であった。
しかしながら私は同時に、かかる内観の道上の進歩は直ちに日常的生活の分野に内的自由の撥露すべきものであって、修道の途次にある間はもとより、たとい道の道奥を窮めた後といえどもこれに知的詮索を加えることは恐るべき邪解であると教えられた。
西欧の神秘家達は私にこれ(父親の説く徹底的に思索を否定する修道)と全く反対の事実を教えた。そして、特にギリシアの哲人達が、彼らの哲学の底に、彼らの哲学的思惟の根源として、まさしくvita comtemplativaの脱自的体験を予想していることを知ったとき、私の驚きと感激はいかばかりであったろう。私は、こうして私のギリシアを発見した。井筒俊彦にとっては父から学んだこの修養法は克服すべきものだったのかもしれないが、それはそれとして、この修養法が彼の脳の力を飛躍的に高めた可能性は否定出来ない。
同じく日本史上の最高の天才といわれる空海もまた、「虚空蔵菩薩求聞持法」と呼ばれる独自の方法で能力開発を行なったことで知られている。
「虚空蔵菩薩求聞持法」とは、虚空像菩薩の真言(ノウボウアキャシャキャラバヤ・オンアリキャマリボリソワカ)を1,000,000遍唱えれば一切の経典の意味が心の中にはいり、その智恵を得ることができるというもの。ちなみにその間に異性のことを考えてもいけないし、食事にも細かな制限がある。
どちらにしても、ある一点に集中するという訓練を一定期間、必死になって行うことで、記憶力が飛躍的にたかまることを示唆している。
もっとも、この方法は大変苦しいもので、一説によれば死亡率が5割にもなるという。ほとんどが狂死してしまうらしい。
イチローは、高校生の頃に、道行く自動車とすれ違うごとに車のナンバーを足したり引いたりしていたという。また、ノイマンかハイゼンベルクかの物理学者は、常に20の箱を思い浮かべ、そこに用事や数字、研究課題を一つ一ついれて、並列的に記憶する訓練をしていたという。同じく物理学者のファインマンは「夢の中で自我を保つ訓練」を高校か大学の頃に徹底的に行ったことを自伝の中で告白している。
同じような逸話を持つ世界の偉人は多いのだ。
学校の勉強に熱心に取り組むことも必要だが、若いころに能力開発法に取り組む方が、天才になるためには効率が良いのかもしれない。
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