2013年10月25日金曜日

徳洲会がまさかこれほどブラックだったとは……

徳洲会のことを初めて知ったのは、私が浪人生時代。徳洲会創立者である徳田虎雄の自伝をマンガで読んだのがキッカケだ。
明日はいい日だ 徳田虎雄 立志青雲編 全2巻完結 [マーケットプレイスコミックセット]

貧しい者が苦しむ世の中の矛盾に立腹して、医者となって苦しい人々を救いたいと決意した幼き徳田氏。でも、いくら勉強しても成績が伸びず、何度もくじけそうになる。自分の頭を呪うその苦難の日々を読み、共感して涙した。俺も頭、悪かったもんなぁ。

自分を信じてニ浪して、ようやく医学部合格を果たす。浪人中にこの本を読んで、どれほど励まされたか分からない。

鹿児島市のさらに南、ど田舎の徳之島から大阪へやってきて、医学部へ合格し、そして地域の医療を改革し続け、医者の傲慢を打ち砕いて真の医療改革を成し遂げるまで……貧困、差別といった障害に負けずに、壮絶な人生を生きてきた徳田虎雄氏のことを尊敬した私は、無事大学に進んだのちに、徳州会主催の地域イベントで誘導員のバイトをしたことがある。

マンガを読んだ余韻もあり、一緒に働いていた二人の看護師に、
「私、徳田氏のこと、尊敬しているんです」
と話したところ、20代と40代の看護師二人は顔を見つめ合い、曖昧な表情を浮かべ、40代の方から、
「学生さんは、純粋でいいよね」
とつぶやかれたのを昨日のように思い出す。

その当時は、
(看護師や医者は、選挙の応援に駆り出されると聞いたから、それが鬱陶しいのだろう)
としか思わなかったのだが……闇はもっと深かった。

これは10/21の記事だが、

★ 新理事長の鈴木氏、選挙関与否定会見は虚偽 運動員を直接鼓舞
徳洲会グループの公職選挙法違反事件をめぐり、昨年12月の衆院選で、医療法人徳洲会の鈴木隆夫新理事長が複数回、鹿児島に出向いて、運動員を直接鼓舞していたことが分かった。選挙への関与を否定した記者会見での発言が虚偽だったことになる。20日の臨時理事会では鈴木氏が発言を覆す一幕もあった。
とにかく徳田一族の選挙にかける情熱は、並々ならぬものがあった。その陰で、数多くの選挙違反があった。上記の運動員への利益供与などは甘いほうで、

★ 徳洲会 容疑者逃亡を支援 平成3~9年「虎雄氏指示」証言
 昨年の衆院選をめぐる同法違反容疑で東京地検特捜部の強制捜査を受けた徳洲会だが、複数の幹部が職員の逃亡を組織的に手助けしていた。
 3人のうち、鹿児島県内のグループ病院職員だった男性は、3年2月の同県伊仙町長選で、徳田氏が支援した候補者陣営の選挙運動を担当し、不在者投票用紙を偽造した有印私文書偽造、同行使の容疑で鹿児島県警から指名手配された。
不在者投票用紙の偽造……これは明らかな犯罪だ。いくら志が尊くとも、絶対にやってはいけないことがある。選挙違反にも、限度というものがある。出会い系サイトを利用するために資格証を偽造するのとは違うのだ。民主主義の根幹への挑戦であり、これではマフィアと、変わらない。

徳洲会は日本最大の医療グループだけれども、
  • 24時間救急患者を受け入れる
  • 患者からの贈り物は一切受け取らない
  • 差額ベッドの廃止
などさまざまな改革をおこなったために医師会からは嫌われた。徳田氏は、衆議院議員となり自民党に入党しても、三日間で追い出されるといった苦難を舐めた。その中から選挙に勝ち続け、多くの人々を救うためにも法律違反は仕方ない、と思い切ったのだろう。

だが、その姿勢は、間違っていたのではないか?

徳田虎雄の次男の徳田毅氏が新婚してすぐに知人女性に乱暴を働き、示談へともちこんだという記事が週刊新潮に掲載されたのは記憶に新しい。

★ 徳田前政務官の「女性問題」辞任 「古傷」が影響?野党はダンマリ
日本最大の民間医療組織『徳洲会』の御曹司、徳田毅代議士は41歳の若さで国交大臣政務官に抜擢された。だが、前途洋々の彼には政治家の資質を問われる脛の傷があった。新婚早々、知人の若い女性を酔わせ、強引に関係を持ち、裁判を起こされたのだ。その訴状には破廉恥な一夜の顛末が…
とある。議員当選前の話とはいえ、暴行事件を起こすというのは尋常じゃない。それをもみ消そうとした父親、徳田虎雄の判断は、どう考えても間違っている。

たしかにこの世界は、矛盾に満ちている。そのために苦しんでいる人がたくさんいる。

だが、それを解決するための大きな権力を手に入れられる資格のある人は、残念ながらそれほど多くはない。過去にスキャンダルがなく、財力があり、人気も高く、その上能力も高いという人間は、数が限られているからだ。残念ながら、徳田氏はその器ではなかった、ということなのだろう。

あのとき……浪人時代に、徳田氏の本を読んではげまされた身としては、徳田一族の一連の騒動は、悲しくてならない。彼の奥さんも、銀行の窓口で受付をしていたが一念発起して、大学に入りなおして薬剤師になったという経歴を持っている。素晴らしい家族なのに、どうして、このような結末を迎えてしまったのだろうか?

初志は間違いなく、高かった。目標とするものも、素晴らしいものだった。だが、過程において、法律違反を当然のことと思い、なおかつそれを隠すことも正しいことだと考えていた。ここが間違いの発端だったのだろう。

尊い志を遂げるために、目的は手段を正当化すると思い、過程を蔑ろにする姿勢は、深刻な傷跡を周囲に刻みつける。法律や道徳を破り続けていると、決まりを軽んじるという姿勢が周囲に伝染する。尊い精神の感染力よりも、下衆な価値観の感染力の方が大きいからだ。

健康は伝染しないが、病気は伝染するのだ。

どこかで息を抜くことは必要だろう。間違いや過ちを、人はおかすこともある。でも、それを正しいことだと思っては、ダメなのだ。悪癖は蓄積し、最も弱い部分にその弊害が現れるものなのだから。どこかで発生した癌は、徳洲会全体に転移し、手遅れとなってしまった。

2 件のコメント:

  1. 私のブログをリンクしてくださり、ありがとうございます。

                                          enneagram

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