2013年11月24日日曜日

マイケル・サンデル教授の『ハーバード白熱教室講義録』を読んだ

騒がれるだけの価値はあった。確かに本書で語られる内容により、考える力が養われる。


「正義」をテーマに、日常の中で生じる選択についてさまざまな観点から議論を進め、カントとアリストテレスに発する倫理観の対立に収束させ、そして私達を答えのない世界へと導く手腕が見事だった。

サンデル教授自身はコミュタリニズムの信奉者のようで、文化、歴史といった物語の中で私達人間を位置づけるという立場のようだが、それを他人に強制することはない。
そして、このような回答のない問題について考え続けることの重要性を訴え、考え方の異なる人の言葉に耳を傾けようと呼びかけ、彼らの意見を受け入れることで自分もまた変わることを受け入れようと述べる。

世の中には回答のない問題があふれている。それでいながら考え続ける意味はあるのか? と良く問われるのだが、そこに意味があることを明らかにした良書だった。
歴史上にはさまざまな問題があり、人類はさまざまな仮定を使って問題解決に勤しんできた。問題というものは、解決すると別の問題が生じるもの。社会問題は永遠に存在し続けるし、全てが解決されることはない。
しかし、その繰り返しの果てに世界は快適になり、よりよい世界へと変わっていく。教授の信念はそこにある。彼の信念に勇気づけられた人も多いのだろう。

環境によって培われた価値観を変えるのはお互いに難しいが、少なくとも話し合いを続けることで、誤った偏見は打ち砕かれていく。
そのためだけにでも、議論を重ねることには価値がある。

※11/25追記
上記記事を昨日アップしたはずなのだが、うまくアップ出来ていなかったので二日越しになってしまった。大変しつれいいたしました。

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