2013年11月4日月曜日

松本人志が映画を撮る決意を、初めて宣言したラジオを聞いた

松本人志の『R100』が大コケしている。私も観ることもないだろう。

お笑いであればあれだけ面白い彼が、面白くないものを作るというのは不思議だ。

ただ、松本人志には最近、本業自体も面白くないという評判も立っている。その原因は、彼の無教養が年と共に露呈したからではないかと、以前ブログで書いた。

★ 松本人志がビートたけしを超えられない理由

映画は総合芸術だから、作る側には知識や教養が必要だ。それだけではなくて、マネージメント能力、プロデュース力、広報活動なども必要となる。彼にはそこまでの力が、残念ながら、なかった。

とはいえ、吉本興業という大企業がバックについている。彼だけではなく大勢の放送作家も協力しているし、映画撮影に長けたスタッフも雇入れているはずだ。それなのに、面白くないものを作れるのは、一種の才能だろう。

たまたまだが、彼が初めて映画を作ると、外部に公表した放送を聞いた。

★ 第034回フルサイズ52分 松本人志の放送室

これは、2002年5月23日(木)放送のもの。映画を撮ると宣言するのは、4:40頃から。

13:00の辺りで、
「これはまだどこにも言うてないんちゃう?」
という放送作家の高須氏の問いかけに、
「言うてない」
と松本氏が答えているので、このラジオ放送こそが、松本人志が映画撮影を宣言した、記念すべき番組だったのではないか、と思う。

彼が映画を作る理由として挙げたのが、しょうもない映画が多い現状への不満。だから自分で映画を撮ることを決意したのだそうだ。

(ほうほう、どんな映画が彼のお気に召さないのだろう?)
と思って聞いていたら、当時公開されていた「スパイダーマン」を彼は挙げた。思わず滑りそうになった。

彼はアメリカ人の感性、大衆娯楽を追求する態度が嫌いだという。だから、ヨーロッパの人々に受ける映画を作りたいと、この放送では語っている。それでいながら、彼がその時に意識していたのが「スパイダーマン」というのは、なんだかなぁ、と思うのだ。

名画座に行けとは言わないけれども、ヨーロッパの作った質の高い映画は今でもたくさんあるのだ。それを一つでも挙げれば、まだ彼の感性に期待も出来たのだけれども「スパイダーマン」を指して、
「しょうもない映画」
だとけなし、自分はそれとは違う映画を撮るんだ、と意気込むのはどうかしている。あれは確かに、しょうもない映画だけれども、単純な娯楽作品というのはそんなもんだ。

トイレに入って汚いと騒ぐのは小学生だ。彼の言ってることはそれと同じ。俺は綺麗なものを観たいんだ! といいつつ、トイレがいかに汚いか語ってもしょうがあるまい。

美しいものを観たいのならば、美術館に行けばいい。そして、美術品を見比べながら、これが素晴らしくこれはまずい、自分はこんな作品を作りたい、という話をして欲しかった。

でも放送の中では残念ながら、彼の口から目標とする映画が何かを、述べられることはなかった。

以上の放送は放送室(4) [Limited Edition]』の名で販売されている。


この話を聞いて思い出したのが、幕末の佐久間象山のエピソード。佐久間は漢学にも西洋の科学にも造形の深い才能にあふれた人物だったが、一番でないと気がすまないという悪癖があった。

だから、たとえば漢学に詳しい人物が彼の元を訪れると西洋の知識を披露して小馬鹿にし、西洋の知識に詳しい人物が訪れると漢学の知識もないのかと蔑視する、という癖があったという。

才能があり、かなりの程度まで成功しても、大成できない人物には何かしら、共通点がある。その一つが、自分の才能を証明するために、自分より劣ったものを引き合いに出して悦に入るという癖があるところだ。

松本人志にも似たところがある。

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