2013年12月15日日曜日

生活保護を受けながらライブに通っていた中年女性が叩かれている件について

生活保護を受けている人々への視線が厳しくなったのは、間違いなく吉本興業の芸人が親に脱法受給をさせていた件が発端だ。番組に親を出して孝行話で儲け高給を得ていたのに、親に仕送りしないのはおかしくないか? とみなが思った。

その上キングコングの梶原の親は大阪府内の超高級マンションに住みながら生活保護を受けていたことも発覚(生活保護費受給のために、祖母から孫へ遺産相続させて、当人は所有しないといううまい方法だ)したから、
「生活保護を受ける前にやることあるだろ?」
と誰もが思ったのは当然と言えば当然だった。私も当時はブログで愚痴めいた批判を何度か繰り返した。

この余波がまだ続き、結果、先日の国会で生活保護法改正案と生活困窮者自立支援法案の二案が可決された。

その件について取材したダイヤモンドオンラインの記事が、波紋を呼んでいるようだ。
★ 「リアル」を知らない政治家に動かされてよいのか? 食費1ヵ月3600円の当事者が語る「生活保護リアル」

リアルを知らないのはお前だろ? とむかつきながら私は読みすすめた。

取材ライターの不誠実・鈍感・無知

――当事者感覚がないのは、当事者でない以上は仕方ないのではないかとも思います。ただ、想像を及ぼす努力を続けるのとそうではないのでは、想像は想像でしかないとしても、全く異なると思いますが。

「今の日本の政治家は、人間としてアウトだと思います。冷酷で。でも、『生活保護バッシング、生活保護改悪で、自分たちの知名度を上げようとしているのかな?』とも思います」
生活保護受給者が叩かれるのは、取材するライターが肝心なことを隠蔽しようとする不誠実さと、鈍感力、無知のせいだといつも思う。

まずは不誠実について。

たとえばこの記事では、取材対象が月にいくら受給しているのかを最後まで書かない。たぶん書けば、それ以下で生活している人々から批判を受けること必至だからだろう。

ライターもダイヤモンド社から、
「生活保護受給者を擁護するような記事を書いてよ」
と言われて書いているのだろう。取材対象に不利な事は書かないのはしょうがない。でも、事実を隠蔽して同情をかおうとしても、感度の強い人は騙せないし、事実2ちゃんなどではフルボッコだ。

★ http://blog.livedoor.jp/dqnplus/archives/1782464.html

それに、この取材対象の女性、現在は家計簿をつけていないという。
5年前に、家計簿をつけはじめました。職場のストレスから買い物依存症みたいになって、自己破産したんです。それから、常に家計簿をつけて、月に何回も家計費を見直す習慣がつきました。今は、ある程度は、家計簿をつけなくても見通しがつくようになっています。
バカかと。見通しがついても家計簿はつけるんだよ。私も10年近く、つけている。財務諸表のない企業を誰が信用するだろうか?

全員がつけろとは言わないけれども、自己破産したり生活保護を受けたりしたならば、一生記帳しろと言いたい。

どうせ隠蔽するならここを隠蔽すればいいのに、このライターも感度が鈍い。

自分と違うから、共感できない

ライターの略歴を読む。
1990年、東京理科大学大学院修士課程(物理学専攻)修了後、電機メーカで半導体デバイスの研究・開発に10年間従事。在職中より執筆活動を開始、2000年より著述業に専念。主な守備範囲はコンピュータ全般。2004年、運動障害が発生(2007年に障害認定)したことから、社会保障・社会福祉に問題意識を向けはじめた。現在は電動車椅子を使用。
障害者という弱者の視点から、最底辺の人々を取材している方のようだ。立派だと思う。だが、それまでの恵まれた来歴が災いしてか、最初から底辺で喘ぎつづけている人々へは共感しない。

取材対象のような「元公務員だったのに鬱病で辞めてしまった」女性などには共感しているのにね。恵まれた環境から地獄へと叩き落とされた、似た立場の人だからだろう。

でもね、世の中には社会人になってからこれまでずっと、朝から深夜まで働き詰めで薄給に喘ぐ人々がいくらでもいる。これまで一度もライブなぞに行ったこともなく、映画にすら数年前に一度行ったきりという人もわんさかいる。

リアルを知らないのはどちらだ

この前、広島県だったかな。朝から晩まで牡蠣を殻剥きする生活に耐えられなくなって同僚を刺殺した中国人男性がいただろう。彼らの仕事は重労働で、慢性的な人手不足だ。仕事がないと言うけれども、この手の住み込みの農作業などの仕事はいつでも募集しているじゃないか。

私も重労働にいくつか従事していたから分かるけれども、つらいもんだよ。仕事はきついし朝は早く夜は遅くまで働く日々だ。

元シャブ中の奴とか元チーマーだとかの同僚は、風俗とスロットの話しかしない。週一の休みにはぐったりしてDVDを観る気力もなかった。

あれほどひどくないにしても、遅くまで薄給で働いて、それでも歯を食いしばって生活保護を受けずに頑張っている人々は大勢いる。

「働かないのに、どうして、自分よりも豊かで、時間的に余裕がある生活を送れるの?」
不条理に愚痴りたくなるのは当然だ。生活保護を批判的しているのは、こういう人々だよ。
http://www.pakutaso.com/より。写真はあくまでイメージです。
ライターは彼らには共感しない、出来ない。彼女がその種の人々にこれまでの人生で接してこなかったからだろうし、彼らに今接しても、
「それはあなたの自己責任でしょ?」
と切り捨てるのではないか? その証拠に、生活保護受給者への批判を重ねる人々も「ネットの向こう側の人」と切り捨てているじゃないか。

だいたい、生活に余裕がある人は生活保護受給者をかわいそうだと思うことはあっても叩きたいとは思わないね。叩くのは、自身も余裕のない人々がほとんどだ。

今までは底辺の人々の声をひろうメディアがなかった。今ではネットで愚痴り放題だ。素晴らしいよね。

生活保護受給者と重労働者のギャップ

本来生活保護を受給しなくてはならない人々をすくい取ることができていないという運用上の問題点。

生活保護を受けている人々を暴力団などが資金源にしているのに、それを見過ごす行政の怠慢。

労働基準法がザル法なので、生活保護受給者以下の「健康で文化的な最低限の生活」しか送れない大勢の人々がいるという現実。

問題が山積みで、その結果、昨今の生活保護受給者に対して世間の目が厳しくなっているという現状がある。でも、その中で一番の問題は、労働基準法違反の企業が蔓延していることだろう。

そこをまず改善しないままだと、不条理に怨嗟の声をあげる人々は増え続ける。一番母体数の多い底辺層がそこで放置されているからだ。

ヘイトスピーチに熱狂する若者だとか、生活保護受給者を批判する人々だとかが、今後も増え続けるのは間違いない。

でも、企業から広告料をもらって活動している新聞や雑誌などのメディアが、労働基準法の厳格な適用を訴えるキャンペーンをはることは、経営環境の厳しい現在では難しいのではないかな。

でも、これをすれば少しは新聞や雑誌などに読者も戻ると思うんだけどね。

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