★ 話題沸騰中の新発売された女子藝大生が描いた「昆虫交尾図鑑」の絵が写真のトレース疑惑ッ! 炎上へ…
上記サイトの検証画像を見れば、どう考えても参考サイト写真を模写したものだろう。しかし出版社は強気で、下記のような釈明文を発表している。
★ 「昆虫交尾図鑑」について
弊社書籍は、著者がさまざまな昆虫の交尾の姿態をイラストで描き、それにコメントを付してまとめたものです。
これに対し、一部読者の方から、弊社書籍中のイラスト(本件イラスト)が他者の撮影した昆虫の写真についての著作権を侵害するものではないかとのお問い合わせをいただきました。
しかしながら、弊社は、弊社書籍中のイラストは著作権を侵害するものではないと考えております。
出版社は案外、いい加減
ところで、最近、これと似たような騒動があったことはご存知だろうか。★ 軍艦本に掲載の写真「二次著作権に抵触」 竹書房が謝罪
竹書房は2013年11月11日、文庫「日本の軍艦120艦艇」に掲載された写真の一部に二次著作権に抵触するものがあったと発表し、「多大なるご迷惑をおかけしたことを謹んでお詫び申し上げます」と関係者や読者に謝罪した。(中略)戦前の写真ならばとっくに著作権が切れているから、それを写真として掲載することに何ら問題はないだろう。ところがそれに着色した「作品」を転載して出版するのはおかしい、とブログ主が下記のように抗議を行い、上記のような結果となった。
同書については個人ブログ「艦艇写真のデジタル着彩」の写真を無断転載しているのではとツイッターで話題になり、ブログ管理者が竹書房に事実関係の確認を求めていた。
★ お知らせ 加筆その2 その3 その4終局のお知らせ
出版社は当初、ブログ主の抗議を黙殺しようとしていたようだ。ところがブログ主がしつこく抗議を行った結果、出版社は渋々要求を受けて、謝罪したのである。
出版社というのは案外いい加減なものだ。多くの人は出版社は著作権のプロだと勘違いしているけれども、彼らは編集や出版のプロではあっても、法律上の知識に案外疎い。さらに、サラリーマンだから売らんがために営業や経営者から圧力をかけられることも多い。結果、編集者は、世間知らずの作家に多少のブラフ(はったり)を混ぜた要求をすることもになる。
「大丈夫ですよ。法律上も問題ありません」
でも、出版社のいうことを鵜呑みにすると、時にクリエイターが大火傷を負うことがあるから注意が必要だ。
この長谷川嬢も、出版社に「写真の転載ではなくあなたが絵にした模写ですから、何ら問題ありませんよ」と軽く言われてそのまま信じたのではないだろうか?
著作権の考え方には相違がある
実際、この種の"模写"については、様々な見解の相違があり、法的に定まっていない部分がたくさんある。飛鳥新社の顧問弁護士が言うとおりに、写真を参考にした模写には写真家の著作権を侵害しないというのが一般的な見解ではある。でも、今は写真を絵画風に手軽に変換できるフォトショップのようなソフトが開発されている。フォトショップでお手軽に写真から作られたものは、果たして作品なのか? その著作権は写真家ではなく、フォトショップで写真を加工した者に移ってしまうのか? 考えだすときりがない。
『スラムダンク』は数多くのバスケの写真を参考に作られたことは有名だ。それをパクリだとして糾弾するサイトもある。
★ スラムダンク・トレース疑惑
私はこれくらいいいと思うんだけどね。ジャンルの違うものであるし、顔を変え、キャラクターの元々の筋肉のつき方に沿って書きなおしたものは、充分オリジナリティーがある。大切なのはストーリーだ。スポーツ写真の構図をそのまま利用しようとも、作品自体の価値が失われることはない。この種の参照は、許容するべきじゃないのか?
もっとも出版社にとってみれば、この手の著作権の問題は、曖昧にしておきたいところだろう。あまり厳密にしてしまうと、本を作れなくなってしまう。曖昧にしておいて、抗議がおこなわれればその都度対応する、という方法でこれまでやってきたし、これからもやっていきたいのだろう。
そもそも著作権は親告罪(訴えなければ罪にならない)なのだ。だから、バレなければそれで済む。バレてもブログ主である権利者と話し合い、納得させられればこの問題は収束する。
今回、出版社が強気なのは、ブログ主との間である程度の合意が出来ているからだろうか。いや、もしかしたら、ブログ主がそれほど抵抗しないだろうと、高をくくったのかもしれない。真相は分からないけれども、少々勇み足が過ぎないだろうかと、出版社編集部の態度が心配になった。
参考文献としてURLを載せれば良かったのに
それにしても……と思う。論文を書く上では、必ず「参考文献」を載せねばならない。これは法律で定められているものではないが、アカデミックな社会ではかなり強固なルールだ。このルールを破ってすべてオリジナルかのように装った者は、学会から追放されてしまう。出版社の編集部に勤務するくらいだから、大学で卒業論文を書く指導を必ず受けているはずだ。知らないはずがない(マジメな出版社はこの種のルールに厳格だ)。
このルールは、先行者に敬意を払うと同時に、参考文献と比較してもらいながら、その論文の何がオリジナリティーなのかを読者に委ねる行為でもある。読者に委ねてしまえば、楽だ。
今回だって、作品の最後に、
「本書は下記サイトの写真をもとに、著者が絵の具で描き起こしたものです」
と注記すればそれでおしまいだったはずだ(その分、著者の評価は低くなるが……それが実像なのだから仕方ない)。
結局、
「シモネタに理解のあるマニアックな天才クリエイター女子大生」
というブランド確立を目指すあまり、事実を隠蔽しようとした出版社の作戦負けだったのだろう。
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