彼の主張にも行動にも共感できませんが、その演説には思わず聞き惚れました。
もともと芸人、大衆の前で話すことに慣れているとはいえ、あれだけ理路整然と、よどみなく、しかも情熱を持って話せるようになるまでには、彼なりの努力があったはずです。
「安倍政権をこのまま存続させたら暗い時代になる」
「特定秘密保護法のせいで自由な雰囲気がなくなる」
という、内容は根拠の無いネガティブキャンペーンのような印象操作だとしても、堂々としたしゃべりっぷり、見事でした。
背も高く、顔もよく、押し出しもいい。数々の批判を跳ね除ける肝の強さも持ち合わせています。
重ねていいますが、彼の脱原発論だとか、政治思想には共感できません。が、それでも、彼に人間的魅力があることを認めざるを得ませんでした。
(政治家として大成するかもしれない)
予感を覚えながら、その場を離れました。
友人の原発再稼働論
その後、友人と数駅離れた場所で落ち合いまして、ラーメンを食べたあとに、コーヒーを飲みながら会話しました。その時の話題がキャリア形成。
私は先ほどの山本太郎の演説が頭に残っていたものですから、彼のことを材料に、
「お笑い芸人から硬派の政治家へとキャリアチェンジをすることに成功しつつある。スゴイ」
という話を訥々としたところ、原発再稼動派の友人から、反論にあいました。
「amakanataさん、あなたの普段言っていることと、ぶれてますよ。そもそも今の日本では、自殺者は3万人もいるのです。彼らを救う方が先決です。そのためには景気回復しなくてはならないのに、原油輸入のために20兆円を国外に流出させながら、それが可能なはずがない。山本太郎のどこがいいのですか」
キャリア形成の話題の一環として、山本太郎の話を持ちだしただけであって、彼の脱原発論に与しているわけじゃないんだけど……と思いつつ、会話というのは生き物ですから、脱原発側として、このまま話すのもオモシロイと思って、話を続けることにしました。
自殺者数は減っている
「そもそも、自殺者数と原発停止による景気悪化は無関係じゃありませんか。だいたい、原発停止後の自殺者数は減っているはずですよ」
最近読んだニュースを思い出しながら答えたところ、友人はそうではない、戦後一貫して増えている、と主張します。
(いや、おかしいな……減っているはずなんだけどな)
反論したかったのですが、携帯のバッテリーが切れてしまったために、携帯で資料を確認できない私。仕方なく、その点で反論するのはあきらめました。
そのあと、シェールガス開発による原油の将来価格の値下がりの可能性だとか、為替相場の影響だとか、いろいろと話をするのですが、基本とする資料がないために効果的な反論ができません。
結局、
「山本太郎のことを持ちだしたのは、キャリア形成に関する話題の材料のため。彼の政治姿勢に共感しているわけじゃない」
というソモソモ論に持ち込んで、話題をチェンジしました。
帰宅後、資料を確認したところ、やはり自殺者数は間違いなく、震災以降も減っています。
2013年に全国の警察が把握した自殺者数は2万7195人で、2年連続で3万人を下回ったことが16日、警察庁のまとめ(速報値)で分かった。前年より663人(2.4%)少なく、減少は4年連続となった。
確実な数字は欠かせない
山本太郎の演説を聞きながらも感じたことですが、説得力のある議論を進める上で、具体的な数字を挙げることは欠かせません。議論の相手がミスリードしたとしても、
「いや、2013年の統計では日本の自殺者数は27,195人。4年連続減少しています」
と一言、言えば、
「そうではない」
ことを証明する義務は相手方に渡るのです。
そして、ここまで具体的な数字を出せれば、そこが論点となることは、まずありません。
少し古い話になります。大蔵省にとって一番大切な数字である一般会計予算は、大蔵省役人が必ず覚えていなければならない数字でした。そこで、1996年まで毎年、数字を語呂合わせで覚えることが決まっていました(現在は公表廃止)。
ちなみに、1996年最後の一般会計予算は、75兆1049億2400万円。その覚え方は「なにごともまずよい暮らし日本の世」でした。
議論を携帯で検索しながら進めることはできません。いくら携帯が進歩しても、検索行為が人間の頭の回転に勝ることはないでしょうから、記憶を鍛えるに勝るものはありません。
具体的な数字を抑える必要性を痛感しました。
(そういえば、議論をする上で必要な数字をまとめた本がどっかで売ってたな)
と思い、アマゾンで調べたところ、ありました。
数日前に、「就活失敗して内定がもらえなかったからMBAにいったらスゴイことになった話」という臆面のない記事を読みました。
大げさに書いているように思われるかもしれないが、周りを圧倒していたと思うし、グループディスカッション終了後に「すごいですね!」、「大学はどちらなんですか?」、「何でそんなに知識があるんですか?」と複数の人から聞かれた。MBAに行った友人から聞いた話ですと、そこでは「ケース・スタディー」という授業方法が取られていて、具体的な事例を元に徹底的に「自分だったらどうするか」という議論をするのだそうです。そのためには基礎資料を読み込み、ある程度暗記しておかなければ議論についていけないといいます。
この記事の小森雅という人物の議論展開も、たぶん根拠となる数字を挙げながらのものだったはずです。
社会の中の基礎的な統計資料の数字を覚えれば、就職活動に役立ちます。
具体的な数字を、頭に叩き込むと、社会の中で、他人よりも少し有利な立場にいることができるでしょう。
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