「社会の"ズレ"を解消すること」
と表現出来るかもしれません。
一方には、カネはあるがモノがない、もう一方には、モノはあるけれどもカネがない。
あるいはモノの代わりにあるのはアイデアかもしれません。カネの代わりにあるのは労働力かもしれません。
いずれにせよ、お互いの持てるものと持てざるものとを交換することで、双方の利益になります。こうしたズレを、補完しあうことが仕事であり、カネが介在すると商売となります。
金融業はそこに、時間を持ち込みます。欲しいモノの値段と、手持ち資金、将来取得予定の収入のズレを解消するために、融資制度がありますが、そこに、時間とともに増える金利を持ち込むことで、大きなズレを補填するのです。
金利を上げれば借りる人が少なくなり、金利を下げれば旨味がなくなります。返済能力の低い人に融資すると焦げ付き率が高くなりますが、返済能力の高い人はそもそも融資を必要としない人が多いのです。
様々な人々の思惑のズレをどれだけうまく修正できるかも、金融業者の腕の見せどころのはずですが、数年前のサブプライムローン問題では、社会のズレを修復するどころか、大きなヒビを作ってしまいます。返済能力が低く投機目的で住宅を購入する人にまで、高金利で融資を行い、それを優良債権にこっそりと混ぜて売ったのです。
住宅市場が悪化して家がすぐに売れなくなった人々は、高金利のため返済が滞ります。住むつもりのない人々は高金利を嫌って、一斉に住宅を手放しました(アメリカでは住宅ローンは家を手放せばちゃらになります)。
さらに住宅市場が悪化すると、返済能力が高くとも投機目的だった人々が、さらなる市場悪化を懸念して住宅を手放します。
住宅ローン債権の信用が高いのは、人々が家を手放したくないため高金利でも返済するだろうという目算あってのものでしたが、目算は外れました。結果、債権市場の信用が大きく毀損してしまい、経済に大きな打撃を与えたのですね。
さて、同じようなことが今、車のローンの世界でも起こっているそうです。
この記事は数ヶ月前のもの。この後、状況はどう変わっているのだろうと調べてみました。まだ日本語に訳された良記事はみつからなかったものの、海外の最近の記事を発見。それによりますと、状況はどんどん悪くなっているようです。
彼によると、6年ほど前までは自動車1台を売れば、3,000ドル(約30万円)程度の利益を上げることが出来たが、今では「1,400ドルから1,800ドル残れば良い方」だと言う。
「もしも一ヶ月に70台から80台が売れれば素晴らしいのだけれども」と彼は話す。
彼が辞めるまではディープサブプライムオートローンの恩恵でそれだけ売れていたのだそうだ。「でも、今では20台から30台がいいところでしょうな」
本来ならばローンを借りられないような貧しい人々でも高利でローンを組めるようにしたのがサブプライムローンと呼ばれるもの。ところがそれは、ディーラーの利益を金融業者に移し変え、ディーラーからカネを奪うものでした。
消費は経済発展の要です。しかし、貧しい人の方が、収入に対する消費意欲が強く、豊かな人はその逆。物事はうまくいきません。金融は、貧しい人の将来と引き換えに、そのズレを解消する役割を果たしています。
しかし、乱脈融資は将来を甘く、甘く見込みます。
「彼らは苦しくても、返済してくれるはずだ」
というように。
しかし、皆さんご存知の通り、甘い見通しは必ず破綻します。破綻は社会に大きな混乱を招きます。それでも当座、儲けられ、破綻しても逃げられれば責任を取らなくてもいいから、金融業者は価値の低い融資=サブプライムローンをどうにかして売ろうと、必死になるのです。それが、今回は「ディープサブプライムオートローン」と呼ばれる車に対するローンだったというわけです。
純粋な商行為だからといって、ねずみ講が許されないのと同様に、いずれ破綻することが明らかならば、それを行政が積極的に取り締まらなければならないはず。それを放置するアメリカの行政は、制度疲労に陥っているのでしょう。
この「ディープサブプライムオートローン」を多用しているのはGM社とフォード社だそうですが、このフォード社の取締役が、元財務長官で、ゴールドマン・サックス会長だったロバート・ルービン。
もしかしますと、彼辺りがフォード社の業績アップのためにこのローン多用を推進しているのかもしれませんね。反省しない人間は、必ず同じ失敗を繰り返します。その見本のような人物です。このままだと数年以内に、再びアメリカ経済は大きなダメージを受けるかもしれません。
いや、もっと早いかな。不動産と違って、自動車は数年で大きく価値を落とします。その分、早く結果が現れるはずです。
いや、もっと早いかな。不動産と違って、自動車は数年で大きく価値を落とします。その分、早く結果が現れるはずです。
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