アメリカ合衆国の人口増加率は、先進国の中で群を抜いています。1910年には1億人弱だった人口が、2010年には3億874万5,538人。100年で4倍弱になったことも驚きですが、ここ数年の増加ペースは驚くほど。10年前2億8,142万1,906人だったので、たった10年で1億人の人口が増えたことになります。
このスピード、いつまで維持できるでしょうか? アメリカ社会はこの異常なる人口増加に、耐えられるのでしょうか?
人口増加の要因は移民と、移民した人々の出生率の高さ。今では、アメリカで生まれてくる子供の半数は有色人種だそうです。あと10年もすれば、白人は少数派となり、テレビでおなじみの合衆国政府の閣僚や芸能人の多くが、有色人種となることでしょう。
このトレンドに敏感なのが出版業界です。特にコミックのような子供相手の商売は、常に次世代のマーケット――未だ明確に現れていない――がターゲット。人口動態を横目でにらみながら、次の次を狙っていかなくてはなりません。
こうして、アメリカのコミック業界の雄、マーベル社は『Ms.Marvel(ミズ.マーベル)』というヒロインを新たに作り上げました。
そのニュースがこちら。今年初めの記事です。
★ 新「ミズ・マーベル」は、なぜ変身できるイスラム教徒の女子高生なのか?
マーベルコミックスは2013年11月、「ミズ・マーベル」をリブートすると発表した。2014年2月からは、まったく新しいスーパーヒロインが登場することになる。ニュージャージー州に住む16歳のイスラム教徒の少女カマラ・カーンだ。リンク先の絵を観ますと、ヘタウマというか、松本大洋の『ピンポン』に似た絵柄でして、パースも狂っているし身体のバランスもおかしいです。発展途上といったところでしょうか。
これが面白いのかどうか。気になっていました。
イスラム教は表現に厳しいことでも知られています。ほんの少しでも侮辱する表現があれば、大変激しい抗議の声が上がります。コミックという自由な表現が必要な場所で、イスラム教徒が活躍するものを描けるのか、否か?
出版社にとっても冒険ですが、これが当たれば、16億人というマーケットを開拓できます。それに彼らは、石油採掘によって大変豊かですので、人気が出れば、関連グッズに惜しみなくカネを支払うはず。大きなビジネスチャンスが眠っています。
しかし、上の記事を読みましてちょっとがっかり。ヒロインはイスラム教徒にしては肌の露出が大きく、受け入れ難いのではないか。また、もう少し可愛く描かないと人気が出ないのではないか。などと思っていたのですが、アメリカで1月に発売されたコミックのレビューを読みますと、それほど悪い評価ではありません。
Marvel, Inc. has made the courageous and bold decision to push the boundaries of what we're accustomed to reading in comics and has given us a much-needed dose of diversity!!といった、マーベル社の取り組みに対する高評価に湧いていまして、Amazon.comを私がのぞいた時には☆5つをつけた人が、8人中7人もいました。
マーベル社は、私達が漫画を読む上で慣れ親しんだものの境界線を取っ払うという、勇敢で大胆な判断を行い、かつ、私達に多様性がとても必要であることを教えてくれています。
もっとも、レビューがあっという間に集まるアメリカのアマゾンで、レビュアーがこれしかいないというと、評価しているのは関係者ばかり間もしれませんけれど。
私は、イスラム的な価値観を持った男性ヒーローが、西洋的な価値観との間で苦悩する、というストーリーの方が良かったような気がするのですけれども、アメリカでは受け入れられないのかも。日本でやってもらいたい試みです。
0 件のコメント:
コメントを投稿