2014年7月31日木曜日

いつも何かの問題が現れる人

先日、
「なぜかプロジェクトの直前にもめ事が起こってご破算になることが多い」
という人の愚痴が書かれているブログを読んだ。

大口の契約が取れそうな時に限って、親が病気になったりといった身辺のゴタゴタがあったり、転職のいい話がある時に限って上司から大変な案件の仕事を割り振られたりするのだという。

よくあることだ。

ただ、物事が必ずうまくいかない人たちには、なにかしら共通の問題を抱えていることが多いものである。

「計画を立てて実行しようとしたら、必ず問題が起こる」
という友人が以前いた。

「これをしたいと思っていろいろと下準備をするんだけれども、その直前に必ず何か問題が起こるんだよね」
と笑って話すのを聞いて、最初は不運だと思っていたけれども、次第にその人自身に問題があるのではないかと思うようになった。

計画に余裕がない

この手の人の計画を見ると、必ずギチギチに積めた計画表を見せられる。週末の休みにも予定がぎっしりと詰まり、一日の計画にも余裕がない。

計画を立てる前には遊んでいたのだから、もっとそう急に予定を変えられないと思うのだが、
「計画を立てるうちに、時間がないことに気がついた。これから予定日までは休みなしでいく」
と宣言する。そして失敗する。

だいたい人生なんて、先になにが起こるか分からないものだ。事件の連続、障害の連続なのである。予定の直前に問題が生じて実行できない人のほとんどは、それ以前に無理に無理を重ねている。

だから直前時期に生じた問題の前で撃沈する。

逆算しない

目標を立てて逆算して考えるのではなく、ものごとを始めてから方法を考えてしまう。

計画を実行する間には、いろいろなことが起こるものだけれども、目標を念頭に置いていれば、多少わき道に逸れても再び元の道に戻れる。

ところが目標が常にぐらぐらしていると、方向を見失っているから、大きな障害が現れるととたんに方向感覚を失ってしまう。方向感覚を失う人は、普段から方向のことを考えていない人である。

目標を達成する段階にない

「直前にあれがなければ・・・・・・」
と後悔する人の能力は、たいていギリギリであることが多い。

余裕があれば、直前期の多少の困難は乗り越えられるものだが、能力が低いとちょっとした困難が大きなハードルに見えてしまう。

でも、そもそもそのハードルが直前期ではなくて、道半ばにあったとしても、挫折していただろう。

自分の能力が劣っているということを認めることはとてもつらい。しかし、それを認めることから、努力が始まる。行動が始まるのだが。

覚悟がない

「絶対にこれを実行する!」
という強い信念を持っていない人が多い。

信念がないから続けられないのに、それを何かの障害のせいにする。言い訳しやすいからだろう。

いつも何かの問題が現れようと何があろうとも、やり遂げられればなんの問題もない。
「それでもこの問題を解決してやる!」
という堅い決意を持っていれば、たいてい問題は解決できる。

直前に揉め事が起こってご破産になる、という人は、揉め事が起ころうが何があろうが、必ず実行してやる、という強い決意を持っていないことが多いように見受けられる。

2014年7月30日水曜日

池田信夫の指摘が面白い 「空気」とは市場で定まる意思決定なのかも

日本軍の戦死者の半分が餓死だったというのは、有名な話かと思います。

その理由は兵站(へいたん=戦争において作戦を行う部隊の移動と支援を計画し、また、実施する活動を指す用語)活動の軽視だと常々指摘されてきました。

前線で戦う兵士こそが優れていて、後方支援をする兵士は2級品だと、太平洋戦争前は目されていたのですね。

その意識は、下記のような戯れ歌にも現れています。兵站担当を、輜重・輸卒(しちょうゆそつ)とも呼ぶのですが、
輜重輸卒が兵隊ならば
蝶々トンボも鳥のうち
焼いた魚が泳ぎだし
絵に描くダルマにゃ手足出て
電信柱に花が咲く
と嘲っていたのです。

これに比べると、アメリカ軍は伝統的に兵站を重んじます。結果として太平洋戦争においてアメリカ軍に日本軍が敗れてしまいました。

さて、経済学者である池田信夫氏は、こうした日本とアメリカの違いを、ボトムアップの判断によって解決策を見つけるか、トップダウンの計算で解決策を見つけるかの違いだと述べています。

★ 日本軍はなぜ半分も餓死したのか

ボトムアップによって解決策を模索する方法とは、市場で需要と供給が自然と決まっていくように、現場の判断を重視した方法。

それに対してトップダウンによって解決策を求める方法とは、オペレーションズ・リサーチ(OR=作戦研究)という、シミュレーションを繰り返して、最適解を求める手法方法である。市場が神の見えざる手で探り当てた数値と同じものを、コンピューターによって割り出す方法です。
要するに、現代の資本主義は戦争に近づいているのだ。そこで必要なのはコンセンサスではなく命令であり、合理的な(一貫した)目的関数を設定して独裁的に実行するスピードだ。これが戦争の好きなアメリカ人がグローバル資本主義で強い理由である。
とのこと。

なるほど、と思わせる面白い指摘ですが、私は別の部分に関心をいだきました。

日本人は計画主義的、アメリカ人は市場主義的だと、一般的に思われています。ところが経営の分野において、日本人の方が、集団の中の同意に基づいた意思決定を重んじている、という点です。たしかに。

「空気を重んじる」
のが日本人の特性だと言われています。この「空気」とは、それぞれの思惑があいぶつかるうちに、自然と熟成された意志のことですよね。計画的に定まったものではなく、お互いの牽制によって意思が定められていく様は、市場経済で価格が定まる過程そのもの。

価格が市場で決まるように、集団の方向性が自然に定まっていくのです。

そうしますと、「空気を読む」をかっこ良くいえば、「意思が市場決定される」こととと言えるのかも。こうしますと、「雰囲気」だとか「空気」だとかいったものに、よりポジティブな意味合いをもたせられそうな気がします。

2014年7月29日火曜日

「なぜ人を殺してはいけないか」のあの番組にid:netcraft が出ていたとは

あの当時の騒ぎはよく覚えている。

1997年、今は亡き筑紫哲也という左派のニュースキャスターが、知識人と高校生をTV局のスタジオに多数集めて、「ぼくたちの戦争'97」と題したディスカッションを行った。ノーベル文学賞受賞者の大江健三郎とか芥川賞作家の柳美里だとか、錚々たる的なメンバーが、そこにいた。

結論ありきの討論会だったと思う。
「戦争はいけない」
という若者たちの“想い”を電波に乗せようとした進歩的文化人たちの思惑がそこにあったはずだ。が、たった一人の若者によってそれは打ち砕かれた。

彼は、左派知識人の重鎮たちに向かって抜け抜けと、
「なぜ人を殺してはいけないのですか?」
と尋ねた。そして、そこにいた誰も、右往左往するばかりで、まともに答えられなかったのだ。

あれだけの知識人がそろっているのに、子供の質問にすらまともに答えられないのか……と、世間は嘲笑した。

大江健三郎はその後、朝日新聞に「誇り、ユーモア、想像力」と題したコラムで、このときのことを述懐して下記のように主張した。
テレビの討論番組で、どうして人を殺してはいけないのかと若者が問いかけ、同席した知識人たちは直接、問いには答えなかった。/私はむしろ、この質問に問題があると思う。まとまな子供なら、そういう問いかけを口にすることを恥じるものだ。なぜなら、性格の良し悪しとか、頭の鋭さとかは無関係に、子どもは幼いなりに固有の誇りを持っているから。(中略)人を殺さないということ自体に意味がある。どうしてと問うのは、その直観にさからう無意味な行為で、誇りのある人間のすることじゃないと子どもは思っているだろう。 ―(「なぜ人を殺してはいけないか(7)――大江―永井論争」より孫引き)―
答えなかったのではなくて答えられなかったのだろうと、テレビを観ていた人たちは大江を嘲笑した。

知識人達が誰一人、子供の素朴な質問に答えられなかったという事実。
偉い先生相手によくあんなバカけた質問をすることが出来たな、という感心。

雑誌などでいろいろと取り上げられたこの事件のあの場に、まさか今はてな村でもっともホットなブロガーの id:netcraft がいたとは……あくまで彼の語る内容が本当だと仮定しての話だけれども、びっくりした。

★ 「なぜ人を殺してはいけないのか?」の疑問には誰も答えられない
私は福島に住んでいたけど、高校生を募集する案内をみて「出演したいです」と番組に手紙を送った。番組から実家に電話があり、私の出演が認められた。
上記記事より転載
私たちが記憶しているあの場所に、彼が参加していたことを想像もしていなかっただけに、過去の風景が書き換わるというショックを味わった。今後、「ぼくたちの戦争'97」のスタジオ風景を思い出すときに id:netcraft の姿がその中にいることを意識してしまうのだろう。

さて、本論。

なぜあのとき、左派知識人たちは子供の質問に答えられなかったのか?

彼らも伝統に寄りかかっていた

そもそも左派=革新主義者たちは、旧来の伝統的価値観に疑いを持つことを奨励してきた人々だ。天皇陛下への敬意、報国精神、男女の伝統的秩序などを、ことごとく否定してきた。

伝統的価値観には、理由のないものがたくさんある。保守主義者たちは、基本的人権などに大きく違反しない限り、伝統的価値観は出来るだけ尊重していきましょう、という立場だ。

ところが革新主義者たちは逆で、理由のないものならば尊重する必要はないだろうと主張する。

ところがだ。革新主義者たちのもう一つのスローガンである「戦争反対」自体、「殺人はいけない」という伝統的な価値観にもとづいたものだった。伝統的価値観を否定し続けてきたくせに、彼らの主張自体が伝統的価値観に依拠したものだったというこの矛盾。

大江の、
まとまな子供なら、そういう問いかけを口にすることを恥じるものだ。
という言葉は、「まともな国民ならば戦争がおかしいと口にだすことを恥じるものだ」のような主張と、本質的に同じじゃないか。

左派が「戦争はいけない」ことは当然のことだ、当たり前のことだと主張する根っこに、彼らが否定してきた伝統的な価値観があった。その矛盾に目を背けていたことが、あの場所で暴露されたのだと、思っている。

どう答えるべきだったか

私だったら、まず若者に尋ねるだろう。
「『人を殺すことがいけない理由』というのはあまりに漠然とし過ぎている。まずあなたに尋ねたい。物を盗むこと、暴力をふるうこと、嘘をつくこと……さまざまな『いけないこと』とされていることがある。そういう禁忌すべてに、理由がないとあなたは考えているの? それとも、貴方自身に『人を殺したい』という強い衝動があってたまらないのかな? それで「人を殺す」ということがなぜ悪いのか知りたくてたまらないとか?」

後者と答える勇気のある人は、あの場ではまずいないだろう。もしも後者ならば、精神治療が必要だよ、と嘲笑すればいい。

前者だったならば、
「『人を殺すのが、いけない理由』について、君は質問した。ほとんどの人は『人を殺すことは悪い』と思っている。でも、あなたはその理由がわからない。そうだね?」
とさらに畳み掛ける。

そうすると、「わからないわけじゃなくて、理由を知りたいだけだ」とか「なんとなくわかるけれども、はっきりと言葉に出来ない」とか言い始めるだろう。そこで、
「『人を殺すことが悪い理由』について考えてみよう。そもそも『悪い』とは何だと思う?」
と、彼の言葉を言い換えて、尋ねてみればいい。昨今話題のサンデル教授ばりに、「正義とはなにか」について語らせてもいい。

質問者自身に正邪を定義づけさせた上で、殺人は「悪」の範疇に入るのかどうかを彼自身の口で語らせれば済んだのではないだろうか。

議論の前提をひっくり返そうとする相手自身に、その質問を別のわかりやすい言葉で言い換え、さらに、要素に分解し、それぞれの意味を定義づけさせる、というのは討論上のテクニックの一つ。「いけない」という曖昧な言葉ではなく、「悪」というより明確な言葉にすればよかったのだと思う。



2014年7月28日月曜日

ベネッセの原田社長は迷走していない

キャリアは作るな、巡り合いに賭けよ より
マクドナルドの元社長でもある原田泳幸は、大変評価の高い人物であるし、人気もあるのだけれども、ベネッセの情報流出事件前から、あまりいいイメージを持っていなかった。

その理由は、私が好きな「藤田田」(ふじたでん)という一代のカリスマの影響力を、アメリカ本社の指示どおり、徹底的に排除することに成功したことだ。見事な手腕で、優秀なマネージャーであることは確か。でも、あの強烈なキャラクターの延長線上にある日本マクドナルドであって欲しかった、という、こちら側の勝手な期待を裏切ったことで、どうしても好きになれぬ。

例えて言うならば、ジョブズ亡き後に、ジョブズの影響力をアップルから完全排除してアップルを立て直した男を好きになれるかどうか、と問われたアップル信者のようなものだ。

それに、やり方も結構苛烈だ。原田氏は、2004年の就任時から8年連続で増収増益を達成し、マクドナルドの営業利益を10倍の281億円にまで増加させた。だが、その実態は徹底したコスト削減だった。

社会保障の充実した直営店をフランチャイズ店へ変え、社会福祉関係のコストを削減し、直営店の中高年の社員をフランチャイズ店へ出向に追い込んで人件費を抑えている事例などが、下記のサイトにはいくつも紹介されている。

★ 日本マクドナルドユニオン

経営者としては優秀だが、労働者側から見れば批判の的。今の私は労働者よりの人間だから、どうしても彼のような人間に批判的になるのは、仕方のないことだとお許し願いたい。

そんな彼がベネッセ社長に就任した途端に、2070万件の個人情報流出問題が発覚した。

退任間際にはマクドナルドの売上を極度に落とし、ベネッセに就任するや否やこのような大きな問題を引き起こす。今では「運のない男」というレッテルまで貼られる始末。

下記記事では原田氏の対応に痛烈な批判を浴びせている。

★ 影を潜める“原田マジック” ベネッセが迎え入れた救世主が迷走

だが、ちょっと待って欲しい。原田氏が嫌なやつであるのはともかく、今回の記者会見などでらとった彼の手法は間違っていないのではないだろうか。むしろ経営者として正しい手法をとっているのではないか。

以下に、上記記事に対する反論を、述べてみたい。

今必要なのは社内の人心掌握

 原田氏は、(中略)流出情報を利用した他の通信教育会社の倫理を問う発言を繰り返した。
 謝罪会見の場で他を非難する-。企業広報に詳しい関係者によると、こうした行為は責任転嫁と受け取られやすく、やってはならないことのひとつとされる。
もしも原田氏が、ベネッセに就任して数年経った頃にこの事件が発覚してこの対応を取ったとしたら、この発言は責められてしかるべきだ。

だが、今回の事件は彼がベネッセ社長に就任して、一ヶ月も経たないうちに起きたもの。まだ、彼が社内の社員の心をつかむ前に起きたことだ。

まだ彼は、社外からベネッセの人間として叱責を受ける立場ではないから、批判も免れうる。逆に、社内からは同志とみなされていない。

こういう時期に自社を批判することは、自殺行為。社員からは裏切り者とみなされてしまう。逆に、世間から批判を受ける中で社員を守る発言を行えば、社員の気持ちをつかむことができる。

原田氏にとって、問題を解決するためにも、まずは社員の気持ちを掴む必要があったはずだ。だから彼は敢えて、他社を社会的批判を覚悟で、批判してみせた。

就任して一ヶ月しか経たない原田氏に、今回の事件の責任がないことは世間もよく理解している。だから、多少、他人ごとのように他社を批判しても、そこまでヒステリックな批判は受けないだろう、という冷静な判断もあっただろう。

カネには出すタイミングがある

ただ、もちろん社会の目は甘くはない。だから、ベネッセ自身の責任を曖昧にする原田氏の対応に大きな批判が起こった。そこで、彼は約一週間後に、総額200億円もの原資を基にした金銭補償を行うと表明した。これが場当たり的な対応だと批判を生んでいる。だがそうではない。むしろ緻密な計算の結果ではないか。

もともと彼はマクドナルドの社長時代、一万円足らずの消費税二重課税事件を解決するために、数千万円の謝罪広告を出した男だ。最初から、巨額の補償対策費が必要であることも重々承知していたはず。200億円もの金額補償は、むしろ彼の想定内だったのではないだろうか。

役員会などに、事件発生当初から、要求していた可能性もある。

しかし、それだけ巨額のカネを出すことを、ベネッセの他の誰も、おいそれと決意できないだろうし、就任して一ヶ月も経たない男の説得が功を奏することもなかっただろう。

そこで、敢えて悪役となり、世間から批判をさせ、ベネッセ役員全員に危機感を与えたのではないだろうか。大きな逆風を受け、初めて世間の厳しさを知る。よくあることだ。彼は批判をうまく利用したと言える。

矛盾ではない

社内の人心掌握と、個人情報流出事件解決を同時に行わなければならないから、今回の対応はとても難しいものだった。

2つの目的を同時に果たそうとするとき、性質の異なる言動が交互に現れるために、首尾一貫せずに迷走しているように見えるが、迷走ではない。2つの計画は時に真逆の行動が同時に必要となるため、矛盾のように思えるが矛盾でもない。

それは、ブレーキとアクセルを交互に踏みながら、目的地に向かうようなもの。直線でアクセルを踏み、カーブでブレーキを踏むことは、迷走ではないだろう。

盾で守りながら矛で攻めることに、なんの矛盾があるだろうか。お互いをぶつけるのではなく、矛も盾も相手へ向けているのだ。

今のところ原田氏は、うまくこの問題に対応していると、私は思うのだ。

2014年7月27日日曜日

楽天の若きエース・北川拓也氏の簡単なまとめ

北川拓也という人物に興味を持ちまして、昨日から彼について書かれた記事をいくつか読みました。
「ハーバード大学って、どうやって入るの?」より
彼の名前で検索すれば、すぐに、彼が書いていたブログだとかフェイスブックに行き当たることができるでしょう。ただ、ブログは二年前から更新されていませんし、ほとんどの人は忙しいでしょうから、彼の人となりをすぐに知ろうとしても、難しいと思われます。

そこで、最近急に北川氏に興味をもった方々のために、彼の考え方やについて、簡単にまとめてみました。


彼のプロフィール

北川拓也氏のプロフィールを、簡単にご紹介しましょう。

  • 1985年生まれ。
  • 灘高校時代に化学オリンピックの国内最優秀賞受賞。
  • ハーバード大学で数学、物理学を専攻、両学士課程で最優等の成績を取得。
  • 2013年にハーバード大学院博士課程修了。
  • 現在、楽天株式会社執行役員かつビヘイビアインサイトストラテジー室室長。


優秀なキャリアですね。

灘高から東大を経由せずに直接ハーバード大学に入学したことで、彼の行動が、
「優秀な学生の新しい生き方」
として、以前から注目されていたようです。そういえば、彼の名前を10年近く前にテレビで見かけたことがあるような記憶がありますが、これは私の勘違いかも。

優秀な人間は、ときに企業にとっては格好の看板となります。ノーベル賞を受賞した田中耕一氏が、島津製作所の研究レベルを担保しているようなもの。北川拓也のような優秀な人材がいる企業として、知的ブランドが一気に上がります。

彼を手に入れようと多くの企業が働きかけたようですが、北川氏を最終的に獲得したのは「楽天」でした。

なぜでしょう?

好きなことを研究できそうだったから

高校生の頃は、「『僕は』何のためにこれを勉強しているんだっけ」ということを、ずっと考えていました。たとえば、ニュートン力学のテコの原理でモノが動く、ということが「僕にとって」何が嬉しいんだっけ?と考えるわけです。
特定の物事にこだわるのではなく、全体的な関係性の中で解決しようとする癖が子供の頃から彼にはあったのですが、同時に、常に「自分にとってそれがどういう意味を持つのか」という主観を大切にしてきたと言います。

科学的合理性を備えた自己愛者、といったところでしょうか。

日本は経済的にはすでに発展しきっていますが、それでも幸せの実感値が低い国です。(中略)とすれば、幸せを「ものの見方や捉え方、価値観」といったものだけで変えられる可能性があるということです。
具体論でいうと、「通勤時間を短くすること」「家の中を静かにすること」「1日10分、死について考えること」「1日1回、人に親切にすること」といったことが、人間の日常の幸福感に直結することが知られています。
人間の幸せを考えるときに、日常生活の中でどういうスイッチを押せば幸せになるのかをできるだけ理解したうえで、取り組みたいと思っているのです。
彼にとって関心があるのは、まず「自分」。しかし、自分が「楽しい」と思う理由を説明するためには、自分だけを研究しても意味はなく、客観的な視点が必要だと考えた彼は、「幸せ」という抽象的な概念を、客観的視点から探求することにしたのでした。

そして、「幸せ」の出発点である「人のEmotion(感情)」を研究したいと思って、楽天へ就職したのだそうです。

もっともそれは彼の関心の一部分であり、その先には、金融政策を扱うマクロ経済と、消費行動を扱うミクロ経済学をつなぐ「ミディアム経済学」の研究や、普遍的なものと個別具体的なものをつなげる理論を見出すことが目的であるとしています。


それにしても、普遍化・抽象化と個別具体的事象との橋渡しなんぞ、「東洋と西洋の橋渡しをしたい」と語る文学者の夢と同じくらい、手垢のついた理念ではありませんか。誰もが考えつつ、それを成し遂げたとして有名になった人は少ないものですが。


実際に彼が楽天で具体的に行っている研究とはどのようなものでしょう? 彼の茫洋した理念とは異なり、結構具体的なもののようです。
数学を使い、過去のデータから「この人はこんなことに興味がある」という相関や「あの人はバナー広告をよくクリックする」といった傾向を見出し、表現していくわけです。
楽天のトップページには1日200万人くらいの来訪者がいますが、かりに全員へ同じようにミネラルウォーターの広告を見せても、興味を持つ人は全体の2%くらいしかいません。ということは残りの98%はまったく無駄になっているわけで、その分をマッチングできれば非常に成果が上がるようになります。 
わかりやすい例をあげると、同じ商品が100円から200円に値上がりした場合と、6000円から6100円に値上がりした場合を比べてみてください。どちらも値上がりした金額は100円で同じですが、感じ方は大きく異なるでしょう。人間は物の値段を「倍々」で感じていると言われていて、この見方に基づけば100円の商品が200円になったときと同じ感じ方をするのは6000円の商品が1万2000円になったときです。
この「人は値段を倍々で感じる」というのが解釈で、購買データの分布1つをとってもそこに解釈を与えることで「こんな動きになっているのは、こういう理屈があるからなんだ」と物の値段への感覚値が垣間(かいま)見えてきて、人間の購買の仕方が明らかになってきます。
顧客のそれぞれの興味に合わせて、これから顧客が興味を持ちそうな情報を予測してカスタマイズされた画面を、個々に提供する、というもののようです。

思った以上に、具体的な研究ですね。インターフェイス研究といったところでしょうか。そこで、「インターフェイス 北川拓也」で調べたところ、次の書籍が見つかりました。彼が共同著者の1人なのかも。

随分強気の値段設定でびっくり。

マッキンゼーが、経営戦略立案をルーチン化して、新卒生でも経営コンサルタントとなるパッケージをつくったように、楽天に出店している4万4000の店舗の店主ならだれでもが、消費行動を促すウェブデザインを構築できるパッケージを作るのが彼の目的なのだそうです。



それにしても、「物理学者」という社会的にステイタスの高い立場から、IT企業のインターフェース研究者という場所に降り立って、後悔はしていないのか?
物理学って、いい意味でも悪い意味でも非常に成熟した学問です。明確に考えたわけではないですが、この時代における物理は存分に楽しめた、という思いがあったんだと思います。同時にニュートンが活躍していたような黎明期の発見の喜びというのに憧れるところもありました。
(中略)
実際に飛び込んでみると、やはり知的刺激にあふれた世界でした。発見できるものの量が全く違うんです。
後悔はしていないようです。社会的地位よりも、自分の価値観を優先するタイプなのでしょう。


「行動変容」から「意識変容」へ

彼は、ネットを利用する人間の行動をどう考えていくか、という「行動変容」にフォーカスすると同時に、「行動変容」によって購買行動を変化させた結果、「意識変容」もさせうる、つまり楽天が人々の意識を変化させ得るのではないか、と考えているご様子。……なかなか危険です。

とはいえ政治的なものには今のところ関心はなく、あくまで電子商取引業社の社員としての役割にとどまりたい模様でして、それ以上の目的は口にしていません。


モノを買ったから幸せになるのではなく、モノを買ううちに、意識が変わり、価値観が変わり、幸せになる……そういう幸せを意識的に行い、顧客を満足させたい、とのこと。
プラットフォームで勝ちに行く事業者は、それより下のレイヤーでプラットフォームが変わったときに乗り換えられてしまうんですよ。今なら具体的には、PCからスマホへのシフトですよね。だからこそ、もっと本質的なレベルで「売買」とは何かを問う戦いに持ち込む必要があるんだと思います。
なるほど。彼の考え方が分かってきたような気がします。

楽天の画面構成を変えて、顧客に消費行動を促すサイト作りにとどまらず、
「楽天で物を買いたい。たとえパソコンからスマフォに変わっても、スマフォから他の媒体にツールが変わっても、私は楽天のファンで在り続けたい」
というファンづくりこそ、彼の目標とするところなのではないでしょうか。

(私、ちょうどそういうテーマに沿った電子書籍を作っていたところなので、嬉しくなりました……それはまた別の話ですが)。





しかし実際の研究よりも、啓蒙活動の方で忙しいのかもしれないと思ったのは、下記の記事を読んでから。

★ 北川拓也氏×Tehu氏が語る、これからの教育で必要な3つの力

灘高の文化祭で女装してももいろクローバーのダンスを踊った灘高性が話題になりました。本格的ですね。

この、なだクロを企画したTehu氏と、北川氏が対談をしています。
結局、リーダーシップは物事を成し遂げる力なので手段を問わないというのは非常に大事。目標を選ばずに、やるべきことを全て成し遂げていく力を持つことが、ハーバードに行って重要なことだと学んだ。
内容としては、やや陳腐。自己啓発本に書かれていることをなぞっているだけのように思います。彼の言葉に含蓄が生まれるためには、経験と実績がまだ不足しているように思えます。



以上、まとめますと、これまでの研究者としての経歴には文句なく、理論物理学について相当の研究をされている方のようですが、楽天で行っている研究の全体像は今ひとつ明らかにならず、彼のキャラクターも、今ひとつパッとしないな、という印象です。

楽天は彼を執行役員にして、何を狙っているのでしょう?

知名度を上げるために、茂木健一郎と対談を行わせたり、人生を語らせたり。

どうも楽天は、彼に研究者としての成果を求めているのではなく、裏に広告代理店をつけて楽天の「看板」として売りだそうとすることに熱心なのではないのか、とも思えるのです。



人寄せパンダか?

人寄せパンダというと語弊がありますが……。彼の研究自体よりも、楽天に欠けている、
「テクノロジーによって現実をより良いものへ変える、革新的な企業」
という、IT企業としてのイメージを彼が体現することを楽天は求めているのかも。

しかし、彼自身にはIT技術者としての蓄積も実績もありません。

理論物理学者としては頭のいい方なのでしょうが、インターネットへの愛がないため、EC企業の社員としては、言動が上滑りしている……彼の現状に、そのような印象を受けました。




人々の嗜好に合わせたインターフェイスを作るのはとても難しいことなのでしょう。結婚している方、妊娠している方、二股をしている方、不倫をしている方、浮気をしている方、愛人を作っている方、2ちゃんねるに入り浸っている方、7人の恋人を抱えている方、twitterをやっている人などなど。いろいろな人々に合わせた入り口を作ろうとする、彼の努力に、これからも期待をしてやみません。

2014年7月26日土曜日

優秀な社員が社内で7人の女性と

とあるツイートが、業界を震撼させているようです。


私、IT業界に疎いため、「EC会社」の意味を恥ずかしながら知らず、調べましたところ、ECとは「Electronic Commerce"(エレクトロニックコマース=電子商取引)」の略であり、Amazonや楽天、ヤフーなどを指しているようです。

ツイートをしている方は、元官僚として有名な方だとか。彼にこうも言わしめる若手社員とは、どんなことをしでかしたのか? ブックマークには下記のようなコメントが。
……あかんやろ。

昔、20代の性欲盛んな頃、愛人を何人も抱える男をうらやましいと思っていた時期が、実は私にもありました。
「英雄色を好む」
という言葉もあります。デキる男が何人もの美女と性愛関係を結ぶ。何がいけないのか? と。

でも、実際に愛人を何人も抱える優秀な人間に仕えてその実態に触れますと、吐き気しか覚えませんでした。浮気をする人間は、必ず嘘をつきます。女性に嘘をつくことを恥じない人間は、自分よりも下位だと考えた人間に、いくらでも嘘をついてはばからなくなります。

それ以来、この手の人間が大嫌いになりました。

そもそも「英雄色を好む」の出典は『孟子』にあります。「梁恵王章句下』に、
王曰、寡人有疾、寡人好色、對曰、昔者大王好色、愛厥妃、詩云、古公亶甫、來朝走馬、率西水滸、至于岐下、爰及姜女、聿來胥宇、當是詩也、内無怨女、外無曠夫、王如好色與百姓同之、於王何有。
とあります。訳してみましょう。
斉国の宣王(?~301BC)が孟子に尋ねた。
「私には悪癖があります。私は性欲が抑えられないのです」
孟子は答えた。
「はるか昔の偉大なる古公亶父(ここうたんぽ=人名)も大変性欲の強い人間でして、姜族の妻を常に愛してやみませんでした。『詩経』にもこう詠われています。

 古公亶甫は、異民族から逃れて馬を走らせた。
 西方を流れる川沿に進むうちに、岐山(現・西安市)の麓に至った。
 この地に姜族の女を連れて住み始めた。

(妻を愛し続けた)古公亶父が世の中を治めていたころ、婚期を逃して世の中を恨む女性も、社会人となったのに結婚できない男も、いませんでした。宣王がもしも性欲が強いのならば、民衆もまたそれを模範として同じようにふるまうでしょう。(世の中の模範となるのですから)あなたになんの問題があるでしょうか。
明治時代、漢学の教養のある人々が、「大王好色」をもじって、「英雄好色」という言葉をひねり出した模様ですが、歴史をひもといてみれば、周代などの古代中国の英雄は、妻を大切にする人が多かったというのが真実。

ましてや現代は、欧米のキリスト教文化圏が主導する世界。乱倫は決して許容されません。一人の女性を愛さずに大勢の女性と異性関係を結んで恥じない人間は、信用されません。嘘をつくのが習慣となった人間を、どうして信用できるでしょうか。

ところが、今の日本ではこの手の乱倫な人間を未だに褒め称える人々が多くて困ります。

そういえば、以前楽天の副社長がスキャンダルで辞任した、という事件がありました。

★ 楽天副会長、突然の辞任 同時に不倫&女性暴行報道
 楽天は、4月22日付けで國重惇史副会長が「一身上の都合により」辞任したと発表した。
(中略)
 その理由とおぼしきスキャンダルを、(2014年)4月24日発売の「週刊新潮」(5月1日号/新潮社)が報じている。そのスキャンダルとは、都内在住の専業主婦と國重氏がダブル不倫をしていたというもの。
(中略)
 また、昨年11月には、國重氏はこの女性に対して暴力沙汰を起こしたため女性は連絡を絶つも、頭を丸めた國重氏の謝罪により2人は復縁。その後、女性は妊娠するが、國重氏が別の女性と浮気していたことが発覚。結果、流産してしまったという。
不倫役員を抱えていた楽天然り、冒頭で挙げられている人物の勤める某EC社然り。こうした乱倫役員を生み出す土壌は、責められるべきです。大企業の役員たるもの、社会の模範となるべく、社内の雰囲気を引き締めていただきたいところです。

さらに言えば、不倫の多い会社には、あるパターンがあります。

・上意下達の組織。
・アイデアを形にするよりも、先行企業のマネをした円滑な業務運営が求められる。
・営業マンが技術者よりも幅を利かせている。
・威勢のいいイケメンが役員に多い。
・残業の多い激務のため、社外交友が難しい。

文化系ではなく体育会系であるから、ストレスの宝庫。Googleのような会社ではなく、半沢直樹の舞台となった銀行や証券会社の雰囲気なのでしょう。

こうした会社で働く社員が親である家庭の多くは壊れていることが多く、家庭で得られない愛に飢えた人々は、社内で不倫相手を調達するのです。銀行でどれほど不倫が横行しているか、話を聞くとゾッとします。

某EC社や楽天に、こういった特徴が当てはまらないことを祈るばかりです。

ところで、切り込み隊長の山本一郎氏が、下記のような意味不明のツイートをしています。
東北楽天ゴールデンイーグルスの北川倫太郎外野手が、いったいこの件とどういう関係があるというのでしょう? 謎は深まるばかりです。

2014年7月25日金曜日

「主人」という言葉が生理的に受け付けられないという性根に嫌悪感

視覚障害者を表す言葉に、
「メクラ」
というものがある。

「メアキ」の対語であり、単純に「目がくらんだ人」(物が見えなくなることを"くらむ"と言う)の意味である。

ところが、「メクラ」という言葉を差別的に使う人が昔は多かった。そのため「差別用語」「放送禁止用語」となり、常識的な人で視覚障害者をメクラと呼ぶ人は、今の日本にはいないだろう。

似たような経緯をたどった言葉に、「土人(ドジン)」という言葉がある。土着の人を表す言葉で、近代になって近代化されていない人々を主に呼ぶ言葉となり、日本ではアイヌの人々を主に指していた。彼らの保護を目的とした「北海道旧土人保護法」という法律が、つい最近、1997年まで日本に存在し得たのも、本来その言葉に差別的意味がなかったからである。

ところがこの言葉も、半裸で過ごす人を指すなど、ネガティブに使われることが多かった。今では常識ある人なら、「土人」などという言葉を使うことはないだろう。

私も使わない。

本来的な意味も大切だが、歴史的な使われ方も大切。そうすると、本来的な意味がネガティブなものであろうとも、使い方や意識を変えていくことで、良いイメージへと変わっていくこともあるのではないか、と思う。

そんな言葉の一つが「主人」という言葉ではないか。

御存知の通り、主人という言葉は一家の長を指す言葉であるが、同時に雇い主も主人と呼ぶ。対等であるべき人間関係に主従関係を持ち込む……フェミニストからすれば許せない言葉だという。下記のブログも、そういうフェミニストの感想の一つだろう。

★ 配偶者のことを主人と呼ぶのが生理的に受け付けない問題
個人的なインターネットなどでわざわざ「主人」と書いている人を見ると「そういう人(結婚に主従関係を持ち込んでおり心の底からそれに疑問を感じない人)なんだなあー」と思います。
わたしは結婚生活に主従関係を持ち込んでいないので、夫のことを「主人」とは呼べないし、オフィシャルな場面でも「夫」と呼べば充分だと思っています。というか、誰かが自分の「主人」であるという状況がちょっと理解できない(奴隷制度を採用していないので)。
この手の主張は昔からよく見かけるので、今更感もある。生理的に受け付けられない人は受け付けられないだろうし、どうでもいい人にとっては本当にどうでもいい話題だろうと思う。

ただ、私が指摘したいのは、男女同権という常識が浸透している今の日本では、言葉の本来の意味よりも、オフィシャル、あるいはよそゆきの言葉としてこの言葉をとらえている夫婦が圧倒的に多い、という事実だ。すでに歴史的な使われ方として、「主人」は、対等なパートナーを他人に紹介するだけの言葉になりつつあるのではないか、という現実だ。

それは、家庭以外の使われ方をみればわかるだろう。職場で社長のことを従業員が「ご主人さま」と呼ぶ習慣など、どこにもないのがその証拠だ。職階制度においては、社長は明らかに上にある。それなのに、社長のことを「主人」と呼ばない。職場で上位者を「主人」と呼ぶ習慣は、今の日本には残っていないのだ。

「主人」という言葉を夫以外に使うとしたら、喫茶店や居酒屋の店主を呼ぶときくらいだろうか。

しかも、従業員に対して、
「あなたの主人を呼んできて」
とは普通、言わない。せいぜい、
「店の主人を呼んできて」
と言うか、店主自体に、
「ご主人」
と呼びかけるときくらいではないか。

主従関係にある人間の上位者を呼ぶために「主人」という言葉が使われなくなったという事実。それは、本来的な意味が失われつつあることを示している。

「歴史的経緯」などというが、歴史は我々が作っていくものだろう。ネガティブな言葉だから使わないようにしよう、ではなく、ポジティブな意味を付け加えていこう、とどうして考えないのか。しかも、すでに現実が既存の価値観よりも先行しているというのに。

ところが、この手の人間(=id:neji-ko)は、旧来的価値観を持つ自分を恥じることがない。そして他人をバカにする。その上その理由を、
「生理的に受け付けない」
などと抜け抜けと表明する始末だ。

昔観た、アメリカ南部の黒人差別を描いた映画の1シーンが未だに頭に残っている。

公民権運動の後に、それでも差別的言動をやめない夫婦が、周囲から反省を迫られていくのがその骨子だ。周囲の声に抗う夫婦だったが、映画のラストだったかな、結局時代の流れには抗せず、夫は謝罪する。ところが、妻は、
「それでも私は、黒人が生理的に嫌なの! 黒人が近づいただけで身の毛がよだつの! どうしても無理なの!」
と叫ぶのだ。

この女生とid:neji-ko氏のイメージが重なるのである。男女同権を宣言するのが文明人ならが、感情を理性で抑えるのが文明人だろう。男女対等の意識を持つ他人が「主人」という言葉を夫に使っているのならば、それを尊重して敬意を払えよ。

生理的嫌悪感なんぞ、糞食らえだ。

……と、かように思うのである。

2014年7月24日木曜日

電子書籍を出版するのに便利なサイト

ご存知の人はあまり多くないと思うけれども、私は昨年Amazonから、電子書籍を出版した。

あれからすでに半年以上。月日が経つのは早い。早く次回作を書かねばならぬ。

昨日、急にそう思い立ち、電子書籍を作るにあたって前回参考にしたサイトを再び見なおしている。ある程度ブックマークしておいたけれども、段々ブックマークしている他のサイトが多くなってきた。このブログにリンク集としてまとめておこうと思う。

本日のこの記事は、今後電子書籍を出版しようと思っている人にとって参考になるだろう。




まずは、私の尊敬する底辺氏のブログより。

★ 電子書籍―無限の地平はみな底辺
上記の記事は、読み物として単純に面白い。電子書籍とはなんぞや? とか、電子書籍を出版する意義について、述べている。ぜひ、お読みいただきたい。

ちなみに、冒頭に掲げた図は、私が底辺氏に、
「上記のような帯をつけて、電子書籍を販売させて欲しい」
と依頼した際に私が作ってみたサンプル画像。

もちろん、謝礼をお支払いすることを条件に底辺氏に依頼をしたのだが、底辺氏からは謝絶とその理由を書いた大変丁寧なメールを頂戴したため、企画は没になった。

どのような理由だったのかは、内緒。情にあふれたメールだった。




★ Kindleダイレクトパブリッシングで電子書籍を出版するときの注意点まとめ
電子書籍の出版を視野に入れている人は、この記事を読めばいい。電子書籍出版において、必要な知識がほとんど網羅されているからだ。
  • 大まかな作業の流れはどんななの?
  • 適切な文章量や価格は?
  • 縦書きで書く時の注意点
  • 表紙画像を作るときの注意点
  • 便利すぎて神! でんでんコンバーター
  • Kindleプレビューツールで実際の見た目を確認
  • iPhoneやKindle Paperwhite実機で確認するときの注意点
  • 米国での源泉徴収税の免除手続き時の注意点
  • Kindleへのデータ登録時の注意点
  • ブログの電子書籍化は漏れなく審査に引っかかる
  • 公開案内メールのURLが違う
  • 公開された後での注意点
これを読めば、すぐにでも電子書籍が出版できると言っても過言ではない。




★ KDPの売上にかかる米国所得税を回避するための具体的手順
電子書籍をいざ出版するときになって、米国納税者番号を取得していなくて慌てる人は絶対に多いはずだ。

アマゾンで出版するということは、アメリカで電子書籍を出版するということ。アメリカの所得税も、課税される。

どういうことか?

上記の「Kindleダイレクトパブリッシングで電子書籍を出版するときの注意点まとめ」でも注意されている通り、なにもしないままだと、アメリカと日本で重複課税されるのだ。

それを避けるための方法を述べるものの中では、上の記事が一番私にってはわかりやすかった。

電子書籍を出版するかどうか迷っているみなさん、書き始める前に、下記の記事などを参考にして、まず米国納税者番号を取得するべし。取得には時間がかかる。いざ出版しようとして出鼻がくじかれる。それを避けねばならない。
★ EIN(米国納税者番号)を取得する手順について




もしかすると、今ではシステムが変わっているかもしれない。とりあえず、Amazonにいろいろな登録をする際に、当時、上記の記事が大変役に立ったので、記録。




本は宣伝しないと売れない。宣伝するための方法がここにある。

私はここまでやらなかったけれども、底辺氏のブログなどを参考に、いろいろと策を弄した結果、下記の通り、Kindle本のいくつかの分野で売上一位になった。




★ キンドル・ダイレクト・パブリッシング体験記録
私と同じ頃、ちきりんも電子書籍を作っていたので、嬉しかったのでブックマーク。



2014年7月23日水曜日

ウクライナがロシアと対立を深める理由 まとめ

マレーシア航空を撃墜したのは、ウクライナ政府と抗争を続けている親露派によるものである可能性が濃厚だという。

亡くなった方々のご冥福を祈るばかりだ。そして、攻撃した側には軽侮の念を抱かざるをえない。バカなことをしたものだ。噂どおりだとしたら、ウクライナ内の親露派、それを応援するロシアに対する世界の目は、厳しくなるばかりだからだ。

それにしても、なぜウクライナとロシアは抗争を繰り広げるのか。両国の間の歴史、報道などを参考に、簡単にまとめてみた。


1.歴史的な対立
ウクライナ・ベラルーシ・ロシアの三国は、共通の民族と祖国を持つ。西暦882年に建国された東スラブ民族の国である、キエフ大公国である。

キエフ大公国の首都はその名の通り、キエフであり、現在のウクライナの首都。つまり、本来ならばウクライナが三国の盟主となるはずであったが、相次ぐ内戦やモンゴルの侵略によってキエフが荒廃したため、モスクワを首都とするロシアが台頭したまま現在に至る。

ウクライナ人は東スラブ民族の中心は自分たちだという自負を持ち、ロシア人は自分たちこそが東スラブ民族のリーダーだという意識がある。両者ともにプライドの競い合いがあった。

2.ウクライナへの虐待

ウクライナは穀倉地帯であり、豊かな土地である。逆に、ロシアはより内陸部にあり、環境としては過酷であった。

過酷な地域で勃興した帝国は強大となる。弱くてプライドの高い国は、強く貧しい帝国にとってみれば目障りだ。

ロシアの歴代政権は、ウクライナに対して、ロシア化を推進したり分割統治したりと、常に過酷な態度で臨んできた。また、近年ではソ連がウクライナのチェルノブイリに建設した原子力発電所が爆発し、ウクライナの人々に大きな被害を与えている。

3.ウクライナ国内のロシア民族

中国はチベット民族が多く暮らすチベット自治区に、大量の漢民族を送り込んで、チベット人の影響力を減らそうとしている。この種の民族浄化は、旧共産主義国ではよく行われてきた手法である。

ロシアはウクライナにロシア民族を大量に送り込んで、ウクライナの国論に影響を与えようとした。現在、ウクライナの中でロシア民族が占める率は2割にもなる。

4.ロシアと欧米の綱引き

国家間では常に摩擦が生じる。うまくいっているように見える日米間でも、懸案が生まれ続けているではないか。いわんや価値観が異なる国家間においてをや。

欧米は契約社会であるが、ロシアはときどき、圧倒的な力を背景に契約を一方的に破棄することがある。その上、欧米に公然と刃向かう勢力(イスラム過激派や犯罪組織、イランやキューバなど)に資金や武器を提供するなどして、欧米を頂点とした世界秩序の邪魔をしている。

欧米がロシアをいかに批判しても、ロシア側はライバルの力を削ぐのは当然として、意に介さない。そこで欧米は、ロシアの勢力圏を少しずつ奪うという地道な努力を続けている。その対立の場が、現在はウクライナというわけだ。

5.ユダヤ民族の恨み

ユダヤ人は、ロシアでは今もなお、差別される側である。アンチキリストとして迫害され続けたユダヤ民族は、欧米では近代化の波にうまく乗って、大勢が資本家として成功して、独自の地位を築き上げた。

しかし、ロシアやウクライナに大勢住んでいるユダヤ人は、社会主義の時代が長かったため、経済的に成功できなかった。今もなお迫害を受けている。これがユダヤ人にとってみれば許せない。

そこで、ユダヤの資本家、特にジョージ・ソロスを中心とした人々が、築き上げた財力でロシアの勢力圏の縮小を企てている。

「これからの社会は、企業が国家以上の力を持つ」
ということが、下記の書籍に記されている。

ジョージ・ソロスを中心としたユダヤ人グループは、巨大資本ならば超大国をすら凌駕しうる、ということを証明しようとしている。


こんなところか。



2014年7月22日火曜日

疑い出したらキリがない

ふと、歩きながら、後ろにいる人間がナイフを持って歩いていたらどうしようと考えた。

他人の脳の中をのぞくことはできないのに、他人の信用するのは一種の賭けと言える。

疑い続けることに必要な精神的コストと、騙されたときの被害とその確率。両者を秤にかけて、後者が下回るならば、信用すればいい。定量的な判断はすべてに優先する。

疑い出したらキリがない。道を歩いていて、横の人が突然ナイフを振り上げる可能性はないとは言えない。しかし、その可能性はゼロに等しい。だから、それについて考える事はムダであり、信じることに賭ける方が、楽に生きることができるだろう。

ただ、問題がある。

騙されたときの被害とその確率を、定量的に測る術がないことだ。無数に存在する可能性の確率を示す客観的なデータなどないのだ。

もしかすると、あることは、騙される可能性がとても高いものなのかもしれない。

逆に、世間で喧伝されているわりには騙される可能性が低いものも、あるだろう。

他人の心はのぞけない。

騙される可能性を測るデータもない。

そんな状態で、よく他人を信頼して生きていけるものだ。手探りで真夜中に森のなかを歩くようなものじゃないか。

こういうことを考えながら歩いていると、段々と後ろが気になってくる。

思い切って振り向くと、後ろを歩いていたはずの男は、いつの間にやらいなくなっていた。


2014年7月21日月曜日

靴紐がいらなくなるグッズ

靴紐が解けるのは不便ですよね。

映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に出てきた靴紐いらずの靴。

どうやらナイキが2015年に販売予定だそうですが、バッテリーが必要なので、毎日使うものとしては不安です。電池切れになった途端、靴紐が結べなくなるでしょうから。

ローテクに勝るものなし。そこで私が取り入れているのは、靴紐の結び方を変えること。チョウチョ結びではなく、イアンノット(イアン結び)と呼ばれる結び方にしています。


おかげで、靴紐がほどけることは劇的に少なくなりましたが、それでもときどきは、外れます。

そろそろもっといい方法はないだろうかと思いまして探しているときに見つけたのが「ヒッキーズ」というグッズです。こういう商品があるのを知りませんでした。


ゴム製で、簡単に留められます。その上フィット感がいいとのこと。

間に合わせのゴム紐はかっこ悪いですが、専用のグッズはおしゃれです。ご興味のある方はどうぞ。


2014年7月20日日曜日

エヴァ映画を「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」も含めてランキング形式で紹介してみた

『新世紀エヴァンゲリオン』がテレビ放送されていたとき、ドンピシャではまった世代だ。TVシリーズはもちろん、映画も今のところ、すべて観ている。

自分が夢中になって観ていた作品が、20年近く経つのに未だに人気があるのは嬉しい。世代を越えた感動の共有に感慨深いものを覚える。

エヴァンゲリオンはテレビ放映の後、エンディングに賛否両論が巻き起こり、数作の映画版が作られて一応の完結をみた。だが、そのあとに『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』と銘打たれた新しい物語が映画となって公開され、新たな議論が巻き起こっているようだ。

その新劇場版が来月の22日から3週連続で、日本テレビ系列の『金曜ロードSHOW!』で放映されることが決まった。

さらには、関東地域だけの話ではあるのだが、月曜から火曜にかけての日本テレビの深夜放送「映画天国」で、旧劇場版も放送されるという。

ファンにとっては喜ばしい限りといえる。DVDがいつでも借りられる時代とはいえ、何百万人という人々に同じ時間を共有できるのはテレビの特権だ。それを想像するだけではなく、今ではTwitterや2chなどで巨大な感動を共有できる。テレビ放映の喜びは、倍増する。

その映画シリーズを、独断と偏見でランキングにしてみた。作られた映画は短編も含めると7つだが、旧劇場版三作目の『DEATH (TRUE)² / Air / まごころを、君に』は前作と前々作を再修正したもののため、短編とともに除外している。



第1位 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』


ランキング形式では通常、下位から始めるものだろう。だが、5作品しかない上に、下位の作品は酷評する予定のため、ファンにとっては不快に思うかもしれない。そこで、不快に思った時点でこの記事を読むのをやめられるように、上位から紹介することにした。

新劇場版の1作目が、TVシリーズの内容から大きく変わらなかったのに比べて、この作品では新しいキャラクターが出てくるは、観たことのない使徒が現れるはで、エヴァファンの度肝を抜いた。新しい謎も加わり、今後の映画シリーズに期待を持たせた良作となった。

ネットでも考察が氾濫しているし、関連動画が有志の手によって、多く作られた。

第8の使徒、テレビ版では第10使徒であるサハクィエルが、TV版のペンキで描かれたハトよけの目玉のようなものだったのに比べ、カラフルになっていてひたすら美しい。


※テレビでは、日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』にて、8/29(金) 21:00より放送予定




第2位 『THE END OF EVANGELION 新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air/まごころを、君に』


記念碑的作品であり、議論を巻き起こしたTVシリーズに一応のピリオドを打った。
改めてタイトルをキーボードに打ち込むと、長い。

TVシリーズの最後が、これまでの物語をぶったぎり、自己啓発セミナーの宣伝ビデオのようなとんでもない終わり方をしたため(だから伝説になったといえるが)、誰もが本当のラストを待ち望んでいた。

当初、監督の庵野秀明は、
「あれはあれで本当のラストだ」
と自己満足していたようだ。でも、満足しないファンの声に応える形で、『新世紀 エヴァンゲリオン』の中で語られた「人類補完計画」の全貌なども明らかにしてくれた。

綾波レイが巨大になって、気持ちの悪い泥人形と化して地球を覆うあの演出はすごかった。

ネタバレをするといけないので詳細は省くけれども、アスカがシンジにつぶやいたあの一言はきつかったな。


※テレビでは、日本テレビ系『映画天国』にて、8/25(月) 26:14(翌26日の早朝2:14ってことですね)より放送予定




第3位 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』

(真希波マリがいないことに注目)
TVシリーズを一応完結させた『Air/まごころを、君に』の10年後に、TVシリーズを再構築した作品。

10年後に公開されたとき、
「ええ、今さらエヴァかよ」
と思った人もいるかもしれない。かくいう私もそうだったが、観た人のの評判があまりによかったので重い腰を上げて観に行って、結果、良かったと思ったのがこの作品だ。

アニメ技術は日月進歩だ。10年も経つと、スタッフの技術も進化している。一度観たストーリーなのに、飽きさせず、テンポよくストーリーが進んでいくので観ていて小気味よかった。新劇場版を観ることを誓わせた作品だ。

私は昔から、ヤシマ作戦の標的となる第5使徒のラミエルが好きだった。週毎に怪獣が襲ってくるなんて、単なるウルトラマンの亜流じゃないか、と思いながらテレビを観ていたときに、この使徒が現れて、エヴァを見なおした経験がある。

その使徒が、映画版では第6の使徒としてパワーアップして現れる。正八面体から様々に変態する様子は圧巻。さらには、シンジたちが月を背景に語らうシーンは美しいの一言。


※テレビでは、日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』にて、8/22(金) 21:00より放送予定





第4位 『シト新生』


ひどかった。

TVシリーズの謎に応えるという名目で作られた作品。当時は今ほどインターネットが発達していなかったため、『シト新生』の評判がわからないまま、TVシリーズのラストに納得いかなかった人々が続々と映画館に詰めかけた。この作品は、彼らを一様に失望させたのではないか。

TVシリーズ(第1話~第24話)を再編集しただけの前半部分『DEATH』編に、観客の誰もがいらだっていた。不服そうなささやき声があちこちで漏れており、私もTVシリーズの感動がなければ席を立っていたに違いない。

休憩をはさみ、第25話を完全リメイクした後半『REBIRTH』編でようやく、気持ちがたかぶってきて、最後の最後でEVA量産機がジオフロントの上空を飛び回り始めたときには、映画館中に「おお―っ」という興奮の声が沸き起こった。

そこで、唐突なエンド。

とたんに、「ええーっ?!」というブーイングが館内にこだました。誇張ではなく、観客全員が映画館で落胆の声を上げたのである。私はパンフレットを買う気になれず、肩を落として映画館を後にした。


※テレビでは、日本テレビ系『映画天国』にて、『EVANGELION:DEATH (TRUE)² 』というタイトルで8/18(月) 25:59(翌19日の早朝1:59ってことですね)より放送予定。

これは、『シト新生』があまりにひどかったために、後半部分を作品として作りなおしたものらしい。




第5位 『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』


劇場版の最新作であり、私に、
「エヴァはもういいや」
と決意させた駄作。

作画はたしかに良かった。新キャラもなかなか魅力的だったし、渚カヲル君との交流シーンも、腐女子にとっては感極まるものだったかもしれない。

でも、話を広げ過ぎだ。TVシリーズもストーリーの収集がつかなくなって、多くの謎を残しつつようやく完結をみたというのに、新たに謎を増やして、まったく別の物語を展開して、話を広げてどうする?! と、一緒に観に行った知人と同じダメ出しで一致した。

エヴァという良コンテンツを作り上げたのはいいものの、その後、国民を総動員するような作品をつくり上げるまでにはいたっていない庵野秀明が、エヴァシリーズを使って自身の可能性に挑戦しようとしているのかもしれない。だが、それではこの作品に感動した人々に混乱を招くだけじゃないの? 新しい物語は新しい作品でやって欲しい。

あのコスプレは、キャプテンハーロックかよ。似合ってねえよ。

もう二度と、エヴァの映画を観に行かないと固く心に誓った。

公式サイトの雰囲気は、静かで美しくて、一番好きなのだけれども。


※テレビでは、日本テレビ系『金曜ロードSHOW!』にて、9/5(金) 21:00より放送予定




以上、賛否両論はあると思うけれども、エヴァンゲリオンの映画版に順位をつけて紹介してみた。「エヴァ祭り」でエヴァに浸ろうと思っている方々や、初めてエヴァンゲリオンに触れる方々の参考になれば、幸いだ。

ちなみに漫画版のエヴァンゲリオンは、18年間の連載の末無事完結、今年の11月に最終巻である第14巻が発売されるようだ。

エヴァゲリオンのパチンコ台は、今も人気が根強い。スロットの中の「生命の鼓動」は、名作の評判も高い。アニメイトでは、エヴァンゲリオン関連のグッズはいまだに人気があるという。偉大な作品なのである。

この記事を書くうちに、エヴァを観ていた頃に感じていた、青春時代の甘酸っぱい記憶を思い出した。

映画版の最終作の公開も、数年以内にひかえている。

最新作が公開される頃には、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』で途絶えた私の興味も復活しているかもしれない。



2014年7月19日土曜日

巨額詐欺事件で有名な、元KKC(経済革命倶楽部)の山本一郎に会ってきた 下

前日の続き)

名前を名乗り、事務所に入る。

いきなり山本一郎氏、ご本人と対面。気さくな人柄。刑務所に8年も入っていたとは思えない、くったくのない笑顔が印象的だ。

いかつい顔つきの男性スタッフが数名。その数倍の、女性スタッフがいた。みなさん、かなりの年配だった。

知人から勧められてこの会のことを知った(本当はネットで観ただけだが)と話したところ、まずはこの会の歴史から学んで欲しい、と言われて観せられたのが、かつてKKC(経済革命倶楽部)が進めていた、地球規模の事業について学ぶ動画だった。

KKCの経済戦略が、いかに素晴らしく、また、世界中の貧困をなくすためにどのような活動に取り組んでいたのかがよくわかった。動画を観る限り、素晴らしい団体だ。世界各地に学校を作り、貧しい人々に仕事を与え、社会貢献を第一に考える団体だという。

どうやら、20年前、逮捕の直前に広告代理店に命じて作らせたPRビデオらしい。カネがかかっているのがよくわかる。

そのあと、山本一郎氏直々の現在の事業の概要説明を拝聴する。

新事業の仕組み

仕組みはとても単純だ。

まず、下記が配布されたチラシだ(ポケットに入れてしまったせいで、シワができているのはご勘弁を)。
「競球事業」への投資を名目にして、1口10万円を山本氏に融資する。

それから、知人にこの事業への融資を勧める。知人が融資すれば、紹介料として5万円が入る。そのさらに知人が紹介をすれば、5万円が知人へ、3万円が自分に入る。山本氏には、2万円のみが融資されるのだそうだ。
(チラシの「本の印税を利益償還させていただきます」という文言にはバカバカしいから、敢えて触れなかった)

ただ、山本氏はさすがに抜け目なかった。そこからさらに新しい階層ができても、知人の知人より先からは、紹介料がもらえない。これにより、無限連鎖講(ネズミ講)を防止する法律の適用を免れると、山本氏は主張する。

(なるほど。反省はされているようだが、これでは儲からないだろう)
と思ったが、山本氏の話は、ここからが本番だった。

「こんなことしていても儲からない。もっといい方法がある。それは「競球事業先払いコース」に投資することだ」

この先払いコースとは、どういうものか。

「20万円をこのコースに投資する。10ヶ月以内に、50万円が確実にあなたのものになる」

その仕組を示したのが、下のチラシ。
(考え過ぎかもしれないが、「◯月度」の◯の部分や短期コースの配当金の部分を黒塗りとした。チラシには、参加日時とまったく異なる月が記載されていたし、数回に分けて支払われる配当金の組み合わせは、妙にランダムだった。これらの数字によって、顧客監視をしている可能性がある)

20万円を融資すると、毎月5万円ずつ、10ヶ月に渡って支払われることが示されている。

支払われるのはいいが、その原資はいったい何か?

……新しい融資者が支払う20万円だという。

そんな馬鹿な。自転車操業じゃないか。破綻しないのか?

「破綻するわけないじゃないか。現在、何百人という人が噂を聞きつけて、この事務所に日参している。その人々のカネを、前の人に渡すだけ。そうやって、順送りにしていけば、決して破綻することはない」





頭がクラクラとしてきた。融資者が増えることを前提に組み立てられた粗雑な集金システム。こんなシステムで、よくも7年もの間生き残り続けてきたもんだ。

「でも、どういう名目でその50万円は支払われるのでしょうか? ネズミ講を防止する法律にひっかかるのではないでしょうか?」

法律違反の不備を誰かが突いた。すると山本翁は、こう言ってのけた。

「なるわけないでしょ。私が支払うのは、紹介料ではなくて、利子なんだから」

紹介料ではなく利子

「利子……」
「そう。あなた方が私に融資する。それに私が高い利子を支払う。それだけでしょ」

別の女性が、それに反論する。
「でも、高利でお金を貸すことは、貸金業法で禁止されているんじゃないでしょうか?」
山本氏は手を振った。

「なるわけないでしょ。貸金業法が守るのは、カネを借りた方。私ですよ。私が『いいんだ、俺が利子を支払うよ』って言っている以上、警察はどうしようもないよ」

いやいや。もしも山本氏が心変わりして、我々を、
「法定利息を越えた暴利を貪ろうとしている」
と訴えたら、どうなるだろう? いつ彼が豹変するか分かりやしない。これに融資する人は、山本氏に首根っこをつかまれるのに等しいじゃないか。


私の心配をよそに、他の参加者は納得顔だ。隣の女性はセミナーが終わるとやおら立ち上がり、この説明会には2度めの参加だと言いながら、カバンから数百万円の札束を取り出して、山本氏に渡して契約書を書き始めている。なごやかな雰囲気が信じられない。

事務員に契約手続きをまかせて、今回は投資をしない人々相手に、山本氏の独演会が始まった。

「それしても腹が立つのは、俺を追い詰めた宇都宮弁護士だ。あいつはなんの罪のない俺を、新しい罪をこしらえて牢屋へ入れた。おかしいじゃないかと、俺は彼に1日に何度も電話をしている。でも、絶対に出ない。居留守を使っている。俺はゆるさないよ」

……弁護士も因果な商売だ。かつて告発した人々を相手にしながら、毎日商売をしなければならないのだから。私は前の都知事選では彼に投票しなかったし彼の政治主張に共感していなかったが、初めて宇都宮弁護士を心から応援したいという気持ちになった。

山本氏は、さらに、ロッカーにしまった何百という通帳を見せてくれた。これが、すべて会員の通帳であり、それに山本氏が入金しているそうだ。

なぜ通帳を本人ではなく山本氏が持っているのか。解せぬ。まったく解せぬ。

ここまでわかれば、これ以上あまり深く突っ込んでもしょうがないので、その場をすぐに去った。

ビルを見上げる。
美しい、きれいな建物。あの喧騒が、まるで嘘のようだった。

彼らは信念をもっていた

この記事では、彼らの事業の可否判断をおこなうつもりはない。以前、多くの人を騙してきた人物の人となりについて述べることが目的だ。

写真から受け取る、ちょび髭の怪しげなオヤジ、というイメージは、実物に会って払拭された。威圧的でもなく、むしろ優しげな表情である。

周囲に細かく気を配る(風邪引いていないか? などと知り合いに声をかけていた)心遣いにもあふれている。

他人をだまそうとするのではなく、自分がこの事業を心から信じていて、楽しんでいるといった風情であった。

事務所にいた人々とも話をしたが、誰もが、山本氏がかつて逮捕されたことについて、まったく納得していないのである。ネズミ講の残党などというのは彼らに対して失礼だ。彼らはこれまでも、正しいことをしていると思ってKKCなどの活動に関わってきたし、これからも正しいことをしていると信じて競球事業に携わっていくのだろう。

(ちなみに「競球」とは、直径数メートルの巨大な玉を、巨大なパチンコ台の上から落として、丁半の穴のどれに入るかを賭けるという博打であり、現在関係各所に新しい賭博を認めてもらうために活動中、らしい)

思えばこのところ世間を騒がせている人々は、みな、何かしらの信念にもとづいて罪を犯しているように思える。

典型的なところでは片山祐輔被告だ。PC遠隔操作は、
「自分を認めない社会をかき回すことは正しい」
という信念に基づいて行われた結果、嘘をついていても堂々とした受け答えで世間を煙に巻くことに成功した。

信念をもっておこなう人間から、悪を嗅ぎ取ることはできない。彼らにあるのは、情熱だけだ。

犯罪であることを知りながら他人を騙そうとする場合、本人が信じていないからバカにされてもくじけない、情熱など生まれてこない。バカにされないように虚勢を張り、強要、脅迫などを行うのが関の山なのである。

信念を持つ人は違う。犯罪などとはつゆほどにも思わず、社会を幸せにするためだと信じて、周囲を説得する人には、威嚇は必要ないのだ。

かつて世間を騒がせた元詐欺師は、決して巷間言われているような極悪人ではなかった。魅力と信念にあふれた人物だった。むしろ社会改革の信念にあふれているからこそ、多少の逸脱もやむをえまいと考えているフシがある。

人格で人間を判断しがちな人は、要注意だろう。直感も大切だが、定量的なデータ、合法性などによる客観的な判断が必要だし、それが出来ない人は、ひとりよがりにならないよう、友人の意見も取り入れた上で、判断せねばならない。

むしろ、まともな人間は、人格なんかで他人を判断できない、という諦めがあるからこそ、客観的にものごとを判断しようと心がけているし、他人の判断も謙虚に仰ぐことができる。

それが出来ない人間、人間性を見れば他人を判断できると豪語する人間は、信念を持つ逸脱者と出会ったときに、ダマされて泣くハメになるのだろう。


2014年7月18日金曜日

巨額詐欺事件で有名な、元KKC(経済革命倶楽部)の山本一郎に会ってきた 上

今年は、堂々と嘘を吐く人々のニュースでもちきりだ。このブログで、彼らの話題を何度とりあげたことかわからない。

正直に話すと、私は彼らに魅力を感じている。羞恥心が強く、嘘をつくことがヘタな私(笑)とは真逆の、明らかな嘘を平気で吐ける人々に、好奇心をかきたてられてやまないのだ。

彼らはどうして、多くの人を騙すことが出来るのだろう? そして周りの人々は、どうして騙されるのだろう?

これまで、新宿のマンションで7~8人に明け方まで監禁されてネットワークビジネス加入を説得された経験や、詐欺師から新規未公開株購入を熱心に勧められた経験が私にはある。そのことを記事にしたこともあった。他にも、まだ書いていない、深刻な経験もしてきた。

だが、私が会ったのは所詮、小物だ。日本中を騒がせるような、本物のペテン師に出会ったことがない。

「本物の偽物」だった人物に出会って、話を聞いてみたい。

……そう考えた私は、かつて日本中を騒がせた、元大物詐欺師に会いにいくことにした。潜入取材先は、経済革命倶楽部(KKC)の元代表である、山本一郎氏の事務所である。

経済革命倶楽部事件とは

1996年から97年にかけて日本中で大騒ぎになった事件だが、もう20年近く前のこと。知らない人も多いかもしれない。Wikipediaから簡単に引用してみたいと思う。

日本の詐欺事件。経済革命倶楽部はKeizai Kakumei Clubとも表記され、略称としてKKCとされていたことから、KKC事件とも呼ばれる。
「未常識経済理論」なるものを主張し、約1万2000人から約350億円を集めた。
しかし、KKCには高額な配当を生み出せるような事業の実態はなく、単に新規会員からの金を配当に廻す自転車操業をしていたにすぎない。
KKCの商法は、無限連鎖講に類似している。しかし、無限連鎖講の場合「…段階的に二以上の倍率をもつて増加する後続の加入者…」(無限連鎖講の防止に関する法律 第2条)が要件とされているのに対して、KKCの場合「新たな会員を1人増やす」だけなので無限連鎖講には該当しない。このため立件には詐欺罪が適用された。
350億円の詐欺事件。規模がでかい。

とはいえ、代表は実刑8年の有罪判決を受け、組織は完全に解体されてしまった。その名前も、もはや聞くことがないと思っていたのだが、このところ、妙な話を聞いた。

ここ数十年のうちに、数多く会った詐欺団体(KKCとか円天とか法の華三法行など、昔はいろいろあった)が、警察当局の手によりほぼ壊滅状態となった。
弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWSより

ところが、その残党……マルチネットワークやねずみ講が大好きな人々……の行き場がなくなり、大勢が出口を探してさまよっているとか。

そこに7年前、出所してきたのが山本一郎氏。最後の一花を咲かせるために、彼らが、山本氏のもとへ大勢集まっている、というのだ。

果たしてその実態はどうなのか? それとも、みなさん悔い改めて、まっとうな事業を始めていらっしゃるのか?

ネットで調べると

まず、インターネットで情報を集めてみた。

数年前の日刊ゲンダイに、山本一郎氏のインタビュー記事が載っている。

★ 新しく編み出した“競球”で大儲けを企んでいる
刑務所から出てきて、すぐに売り始めた毛生えシャンプーがウケちゃってねえ。それとローヤルゼリー。市価2万5000円のところ、2万円で売ってる。原価が3500円だから、1万6500円の利益がある。そのうち1万円くらいを会員のみなさんに分配してます。
上記の記事は、いつの間にやら、キャッシュでもみられなくなっていたが、リアルライブというサイトでも、出所直後の山本氏にインタビューした記事が掲載されていた。

★ 11年ぶり出所 KKC山本会長 独占インタビュー
私はね、逮捕されてから11年も刑務所に入っていたんだよ。出てきたのはつい5日前。刑務所を出るに当たって、私が固く決意したのは、お金を出した方々に全額弁済をする、ということです。

次に、彼が新しく始めたという「競球事業」について書かれた記事を発見した。

★ 競球事業の副支部長・共同玉主募集


「敬天新聞」という右翼団体のサイトには、KKCの後継団体「経恵志」の危険性を忠告する記事もある。

★ KKCが経恵志(ケーケーシー)で復活


こういった記事を注意深くたどり、山本氏が現在主催する、「株式会社山本経済研究所」の住所や連絡先を見つけた(リンク先をご案内すると、いろいろと支障がありそうなので、興味のある方はご自身でお調べください)。

日暮里駅近くの事務所

彼のもとを訪れたのはほんの少し前。
日暮里駅からしばらく歩き、大きな交差点を過ぎると、高層ビルが見えてくる。この辺りは再開発が進んでおり、しばらく歩かないうちに、周囲を睥睨する高いビルがいくつも建っていて、驚いた。

古ぼけた雑居ビルを予想していた私は、彼の事務所の周りの風景に、いくぶんめんくらった。もっとも、ところどころに古いビルも点在している。たぶん、山本新経済研究所が入っているのもそのうちの一つだろうと思っていたが、そうではなかった。
きれいなガラスが嵌めこまれた、ずいぶん近代的なビルではないか。山本氏の現在の活況が推測される。

入り口には下記のようにテナントの一覧がずらり。司法書士事務所のようなお固い業種も並んでいる。

(まともなビルじゃないか)

ところが、エレベーターに乗り5階に降りると、経済研究所の入り口のドアの前にいくつもの監視カメラが備えつけられていたためにドキリ。

少なくとも3台は設置されている。一気に緊張感が高まった瞬間だ。



2014年7月17日木曜日

セミナーや研修会を主催したいときに役立つサイト「イベントフォース」

情報を発信してみたい、と考える人が、私の身の回りに増えています。

学んで身につけたいろいろな知識を、他人に伝えてみたい、と考えるようになった友人がボチボチと出てきたのですが、これは年齢が関係しているのかも。

知識をどうやって身につけようかと悪戦苦闘していた20代までに比べて、30代になると、やや余裕が出てきます。今度はその知識を他人に伝えていきたい、という欲求が出てくるのかもしれません。

セミナーや研修会の主催者になるのが方法としては王道でしょうが、セミナー仲間などがいない状態で聴衆をどうやれば集められるのかは、みなさん悩むところでしょう。
  • ブログを活用してイベントを告知する
  • mixiなどでイベントを主催する
  • Facebookでセミナーを開催する
などが考えられますが、リスク管理のために、普段のSNS活動と、主催するセミナーとを分けたい、と考えている人にとっては、どれも今ひとつだです。

――普段使いのSNSでは、会社の愚痴を匿名で書いているけれども、仕事でJavaScriptを使っていてjQueryを習得した。他人に教えることで、知識の定着をねらいたい――

匿名と実名とを使い分けられることがネットのいいところ。イイトコどりをしたいと思う欲張りのために、セミナー告知だけができる、良いサービスはないだろうか?

……と思って探しているうちに見つけたのが、下のサイトです。

★ EventForce

なかなかおもしろそうです。それに、面白そうなセミナーがいろいろと探せそうなのも嬉しいですね。

実はこのサイト、私がコーヒーミーティングで出会った人から教えてもらったものでして、そのときにメモに書き留めていたのに、忘れていたものでした。

最近、メモが出てきたために、ここでついでにみなさまにご紹介しようと思ったまでです。

……実のところ、私もまだ参加したことはないのです。
一度オーディエンスとして参加して、使えそうならば自分も研修会などを主催してみようかな。

2014年7月16日水曜日

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』感想

7月4日に公開された『オール・ユー・ニード・イズ・キル』を新宿で観た(中黒打つのが面倒だね。『オールユーニードイズキル』のタイトルのほうが良かったかも)。

それほど期待していなかった。52歳のトム・クルーズが戦闘経験皆無で前線に送られるというストーリーにリアリティーはないだろうと思ったからだ。

それでも私が映画館に足を運んだのは、私が好きな『シュタインズ・ゲート』に言及してる感想ブログが多かったので、興味を惹かれたから。「タイムループものにはずれなし」という格言もある。ちょっくら観てくるか、という軽い気持ちで出かけた。

結論から述べる。観てよかった。誇張抜きで、涙を流して私は泣いた。世間の評価が高いのも当たり前だ。

以下、できるだけネタバレ無しでこの映画を宣伝してみたい。

脚本の力

まず、私が懸念したリアリティーについては、うまく説明していたために損ねることがなかった。
「ああ、あの状況ならば、こういうことも起こりうるだろう」
と納得させる入り方。

全般的にハリウッド映画の脚本は、よく練られている。同じくSFを扱う日本のアニメでは、
「あの能力があるのに、どうして今それを使わないんだ?」
というシチュエーションが度々出てくるが、ハリウッド映画では、極力、どうしてそうなったのかを丁寧に説明する傾向が強い。それなりのカネをかけているから、矛盾が取り除かれ、突っ込みどころが少ない。その結果、醒めて我に返ることも少なく、作品に没頭できる。

『オール・ユー・ニード・イズ・キル』もまたしかり。タイムループものを観ているときに感じる、
「あの選択肢をなぜ試さないのか?」
というもどかしい思いを、この映画ではほとんど感じることがない。

仲間が殺されることが分かっているのならば、仲間を巻き込まない方法取ればいいのにとか、逆に、1人では解決できないことが多いならば、仲間を募ればいいのにと思うことが、他作品ではよくある(残念なことに『シュタインズ・ゲート』でも、それを何度か感じた)。主人公がなぜかその方法を試さないから観ていてもどかしくなるのだ。良心的な作品でも、
「これも試したが、うまくいかなかった」
と少し触れる程度だ。

ところが『オール・ユー・ニード・イズ・キル』では、伏線を縦横に巡らせているので、出来ない理由に納得できる。そして、可能性として考えられることを、主人公のウィリアム(=トム・クルーズ)は一つ一つうまくいくまで丁寧に試す。それがテンポよく描かれているから、飽きない。

原作をもとにした漫画も読んだ

映画を観た後、早速本屋で小説をパラパラとめくり、結果、漫画版を買うことにして、原作の小畑健の単行本2冊を買って読んだ。まあ、よかった。映画の余波があったから、ウルっと来た。アマゾンでも売れ行きは好調のようだ。ヤングジャンプで連載されていたようだ。

だが、原作はストーリーが単純だ。それに比べて映画版では、たった一つの単線的なストーリーではなく、ある問題が解決したら、さらに別の問題を解決し、それからさらにもう一つの難問も解決するという、二重三重の展開が待っている。

その上、アメリカ人の郷愁を誘うのだろうか、だだっ広い平原をたった2人で車で旅をする、というお決まりのシーンも描かれていて、適度にアメリカナイズされているのが心地よかった。適度なローカライズに、原作を完全に咀嚼した余裕が感じられた。

桜坂洋の原作よりも、ハリウッド映画版の方が、ラストも含めてよかったのではないか。

ちなみに、私が涙を流したのはラストだった。

あのシーンを観た瞬間、彼らのたどった運命、その齟齬が脳裏の蘇った。年をとって涙腺がゆるくなったという理由もあるのかもしれない(映画館では、私の周りは誰も泣いてなかったから)。だが、年齢を重ねたからこそ感じるものもある。主人公のウィリアムがたどった、いくつもの挑戦。それを経た上での、さいごのシーンのあの笑顔なのだろうと思い、私は自分の身に置き換えて涙を流した。

タイムリープは絵空事か?

御存知の通り、空想が現実化することの多いSFの分野の中で、唯一実現せず、まったく進展のない分野が時間旅行だ。

タイムリープは絵空事。だから、観ても得るものはあまりない、ただ感動だけしていればいいという考え方を、この映画を観る前には思っていた。

だが、ちと違うのではないかと、思い始めている。

主人公は、同じ1日を何度も繰り返す。漫画版ではループした回数を手の甲にマジックで書くことで、彼らの繰り返した絶望を表現する。その回数100回以上に及ぶ。無限の繰り返しのように思える。

……だが、よく考えれば私たちも、代わり映えのしない繰り返す毎日を送っているではないか。

宮台真司という社会学者は、20世紀末に「世界は滅びない」「素晴らしい未来も、ない」と喝破して、「終わりなき日常を生きろ」と人々に諭した。

毎日、同じことの繰り返し。少しずつ年をとるかも知れないが、一年前の自分と今の自分とでは、さほど肉体的にも変わらない。精神的にも進展しない。永遠とも思える繰り返しの果てに、やがて老い、人は死ぬ。それまではとても、長く思える。

さて、365回同じ毎日を繰り返しているのに、映画の主人公と同じくらいにあなたは成長しているだろうか? そうではないとしたら、その違いは?

映画ではその違いが、丁寧に描かかれる。主人公が短期間で成長するためにやったこと。徹底的なシミレーション、同じ過ちを絶対に繰り返さないと誓う決意、その記憶、理解できる形まで簡素化した計画などなどを観せられるうちに、
「ああ、こうすれば、繰り返される凡庸な日常から、逃れられるのだろう」
ということに考えが至った。

タイムリープものは、マンネリ化した日常の繰り返しを打破して、新しいステージに移るための方法論を描いたものとしてとらえ直せるのかもしれない。だから、人々はまったくの絵空事にも関わらず、この分野に興味や関心を抱くのではないか? それが現実の打破につながると信じて。

トム・クルーズの演技

それにしても、トム・クルーズの演技は抜群に良かった。

彼はいろいろと問題がある人間だ。離婚と結婚を繰り返し、カルトと認定されている新興宗教の広告塔として活動している。それでも彼が、いまだに多くの人から愛されているのは、彼の演じる人間が、不屈の魂を持ち、絶えず明るく前向きで、嫌味のない人物であり、それを観て育った人々が、スキャンダルがあろうと何があろうと、彼のことを愛さずにはいられないからだろう。

年を取れば人格が演技にもにじみ出てくる。ところが彼は相変わらず快活で、キャラクターも安定している。映画で演じる人格と、さほど変わらないからではないか、と思う。

とりあえずオススメです。映画情報は下記より。

★ オール・ユー・ニード・イズ・キル


2014年7月14日月曜日

はてブオフ会に参加してきた

読者の中には、「はてなブックマーク」というサービスのことをご存知でない方もいるかもしれないので、まずはそこから、簡単に説明したい。

はてなとは

ネットにはさまざまなサイトがあふれていていて、毎日何万という記事が量産されている。そこからあてもなく、面白い記事を独力で見つけてくるのは難しい。

そこで、誰かがある記事を面白いと思ったら、「はてなブックマーク」というサービスで記事名とURLを登録する(簡単にできる)。何十人という人が登録した記事は、はてなのトップページに表示される。


集合知を利用して、面白い記事が自然に集まる仕組み……はてなブックマークは、最近知られるようになったGunosyNewsPicksといったサービスのさきがけだったといえる。

ところがこのサービス、ITエンジニアが大勢集まっていたために、理屈っぽくコミュニケーション障害気味の人が利用者に多いという特徴を持っている。

その結果、よく言えば頭のいい、悪く言えばひねくれた人々がお勧めする記事が多く集まる。そこが魅力的だ。世間の視点と、一風変わっているのである。

ただ、利用者同士の応酬は理攻めの殺伐とした方向に流れやすいという短所も持っていた。それも魅力といえば、魅力なのだが。

その「はてなブックマーク」の愛好者同士のオフ会が、7/12(土)に開催されたので、参加してきた。

はてブオフ会に参加

主催者は、「はてな村定点観測所」のブログ主である齊藤貴義さん。

私はこの人の書く記事に共感することが多くて、はてなオフ会を主催すると宣言する前から、彼の記事にときどきブックマークをしてコメントを書いていた。現状にいろいろと不満を持っているところとか、好奇心旺盛でいろいろなところに首を突っ込むところとか、他人とのコミュニケーションが下手なところとか、その他いろいろなところが、私と似ていた(と、私は思った)。

だから、オフ会に参加したいというよりも、齊藤さんと仲良くなりたい、というのが私の一番の目的だった。社会人になると、友人ができにくくなる。ここで、新しい友人と出会えるかもしれない、という期待もあった。

場所は京急蒲田駅から歩いて5分の距離にある、大田区産業プラザPiO(ピオ)。

私の前にはid:crapmanという気さくな人物、私の右横には砂糖次郎(id:sugar_jirou)さん、左横にはid:workingmanisdeadという女性。砂糖氏は下記のブログを書いているので、ご興味のある方は御覧ください(はてブ作法にもとづき、idには敬称略)。


この砂糖氏のことは、印象に残っている。哲学科を出ていてニーチェに一時期関心を持ち、現在は西部邁に関心が移っているという彼とは、もう少し話したかった(って、ここまで書いて良かったのかな? もしもダメだったらニーチェ……云々の記事は削除します)。

id:kgkyskとの話も面白かった。彼は大学を中退して、いろいろなことに挑戦しているのだが、自分から「意識高い系」などと自嘲気味に話す謙虚な人柄の好青年だった。

私もそうだったが、若い時には時間が無限にあるとおもって、今考えれば無駄なことを多くしていた。今となっては、もっと効率的な生き方があったと思うので、そんな話をしたかったが、できなかったのが悔やまれる。幸せになるために、モテなかった自分を変えるために、路上ナンパに精を出していた時期が、恥ずかしながら、私にはあった。そこに理論を持ち込んだ人々を、尊敬していた時期もあった(今でも理論自体には興味はある)。初めて会った女性に声をかけ、喫茶店に誘い、話をするという行為が、とにかく楽しかった。

彼には、その頃の自分と同じ臭いを感じたので、ちょこっとその話をしたのだが、本当は、あれは全般的に時間のムダであり、幸せになれる相手を探すのは別の方法だといったことを話したかったが、説教臭くなるからやめた。

彼の日記は下記より。


彼らと話していたところ、派手で押し出しのいい人物が私の横に座った。
「へえ、こういう人もはてなブックマークやってたりするんだ」
と思いながら話をしていると、私もブックマークをしたことがある、「「鬼から電話」を批判してたら「弁護士からメール」がきたでござる パート2」を書いていた大彗星ショッカー(id:daisuiseishocker)さんだったことが分かってびっくり。

私の地元に、彼と似たタイプの友人がいる。お互いに違うタイプだから、友情が長続きした。私が上京したのでついつい疎遠になってしまったのだが、その友人と、話し方のふしぶしが似ていて、なつかしい。

多分彼ともっとつきあいを深めれば、楽しいのかもしれないと、友人のことを思い出しながら思った。はてブオフ会は滅多になさそうなので、その機会はなさそうだけれども。軽そうに見えて、理論的に物事をとらえていくタイプだ。ただし、私の友人はどこか詰めが甘いところがあるのが短所だった。大彗星ショッカー氏が同様の短所をもっているかどうかはわからないが。

実行委員へお礼と結末

その他の人々とも、楽しい会話となった。それだけで、行った価値はあった。実行委員の方々に、厚く御礼を申し上げたい。

なお、オフ会で実行委員のコウモリ(id:rlee1984)さんのプロポーズというサプライズがあった。


私、この人のブログがはてなブックマークのトップページに上がっていたために、何度か読んだことがあったのだ。でも、すべてをネタだと思っていた。フランス人女性とつきあっているという妄想を抱えた男性の自慰日記だと思い込んでいたのだから大変失礼な話だ。

マリーヌとやらの写真がときどきアップされていたけれども、(フランスのどこぞのサイトから画像を引っ張ってきたんだろう。やれやれ)と思っていたが、飛んだ大間違いだった。彼女が本当に、楚々としたフランス美人だってので、びっくりしてしまった。

末永くお幸せに。


ところで、肝心の齊藤さんとは、あまり会話ができなかったのが悔やまれる。やっぱり、三次会までいたほうがよかったのかな。少しだけの会話からも、良い人柄が感じられた。それを知ることができただけでも良しとしよう。

彼とは、ごくごく普通の友人として、いつかつきあえれるようになったら嬉しいのだが。

2014年7月13日日曜日

事件の主役が護廷十三隊の隊長だったら

今年は風変わりで興味深い事件が多発しているわけですが、それを風刺したさまざまなコラージュ写真がネット上に上がっています。どれも力作揃いです。

これを最初に見た時にはわらいました。

こちらもよく出来ていますね。

これもなかなかです。

こういった画像は、下記のまとめブログに載っていました。

★ 2014年犯罪王下七武海の画像更新しようぜwwwwwwwwww

そのコメントの中に、
七武海というか犬入れたら普通に護廷十三隊もありなんじゃねえかと思った
それほどまでに今年キャラ濃い奴多過ぎるわ
数絞っても良いけど話題に上がった奴らだけでももう10人以上余裕でいるだろ 
というものがありました。『BLEACH』は私も好きです。もしかして、すでに誰かが作っているのではないかと思っていろいろとググったところ……




ありました(笑)。


こうしてみますと、全員キャラが立っていて、まるでドラマの主人公のようです。

2014年7月12日土曜日

与沢翼が、小保方や佐村河内と並べられない理由

今年は虚言者の当たり年だ。ネットでは有名になった犯罪者や虚言者たちを一覧にしたカレンダーが出回っているほどだ。

6月の代表が塩村議員であるのは少しかわいそうだが、過去のおぞましい告白と現在との落差から受けるインパクトは、他の面々に引けをとらないので、残当(残念だけど当然、というネットスラングです)といえるかもしれない。

また、北野武の有名な映画ポスターをパロディーにした下のような画像も出回っている。
道端で会っても普通そうだけれども、全員いろいろと腹黒いところが、怖い。

ところで、この中に1人、重要な人物が入っていないことが気になっていた。情報商材の販売などで資産を築き、「秒速で1億円を稼ぐ男」のキャッチフレーズで有名になった与沢翼だ。

与沢のことを知らない人もいるかもしれない。簡単にWikipediaの解説で紹介する。
与沢 翼(よざわ つばさ、1982年(昭和57年)11月11日 - )は、日本の実業家でネオヒルズ族の一人である。株式会社YOZAWA TSUBASA Holdings、株式会社フリーエージェントスタイルホールディングス代表取締役社長。
(中略)
2006年(平成18年)3月 - エスラグジュール株式会社を設立。3年半で月商1億円を超えるネット通販会社になる。
(中略)
2014年(平成26年)4月26日、自身のFacebookで「資金が完全にショートした」とし、フリーエージェントスタイルホールディングスが破たん状態にあることを明らかにした。
一時期テレビで彼の豪遊ぶりを盛んに宣伝したため、覚えている方も多いだろう。

ところが、内実は自転車操業だったようで、支払いが滞った結果、資金繰りがショートしたと与沢はメディアの前で告白してみせた。もっとも、その実態は計画倒産だったのではないか、と疑われている。

★ 与沢翼氏を探偵が追ったら…
自身のブログや週刊誌で嘘八百を書いて人々の同情を引き、有料メルマガを募って毎月いくらかの金を得ることは法律用語で何と言うだろう?
与沢が最近書いた本については、id:hagexの記事に詳しい。

★ 山師は変わらず。そして死なず。すべてが中途半端な与沢翼の『告白』

私は与沢という男がテレビに出始めた頃から、この男のバックには誰がいて、なんの目的でイカサマを続けさせるのだろう? といぶかっていた。そして、いつか彼は破綻するだろうし、その時にはトカゲのしっぽ切りの如く、背任容疑などで逮捕されるに違いなく、そうでなければ暴力団から殺されてしまいだろうと思っていた。

ところが上記記事によれば、経営破綻後も、正体を明かさずにフェイドアウトしていくつもりらしいし、それに半ば、成功しようとしているようだ。答えを知る術は、どうやらなさそうだ。

頭がよく、世渡りの上手な男だ。裏にどのような組織がいるのかわからないが、彼らの図面通りに演技して、豪華な生活を続け、組織の指示通りに会社をたたんだのだろう。うらやましくはないけれども、その能力と根性には嫉妬する。

冒頭での画像で取り上げられている小保方、片山、佐村河内、野々村といった虚言者たちの嘘は、すでに明らかになっている。嘘で塗り固められた過去の業績がしっかり証拠として残っていた者、自爆した者、共犯者に裏切られた者、調べれば分かる嘘だった者など様々だが、一時期の主張や経歴がすべて嘘であったことは歴然としているし、もはや逃れようもない。

だからこそ、外野は安心して叩けるし、あざ笑うこともできる。

だが、与沢翼はどうだろうか?


彼の話がすべてハッタリであり、宣伝する生活は虚飾であることは、最初から、多くの人から見ぬかれていた。でも、確たる証拠を残すことはなかった。虚飾であることを暴露することもなく、虚飾のまま、真実らしく幕引きを図り、虚飾だったことを信者に気づかせないまま信者のカネを持ち逃げすることに、半ば成功している。

肝心のことは何も言わず、司法の手に渡ることもない。誰もが胡散臭いと思っているけれども、誰もその罪を追求することが出来ない。これこそ本当の詐欺師だ。しかし、私たちにはどうしようもない。

彼の影にあるのは、たぶん本物の暗闇であり、底知れない悪なのだろうと思う。だから、完全な嘲笑の対象にすることを、人々がためらうのではないかと思うのだ。


2014年7月11日金曜日

一人暮らしの人向け カネがなくても買うべき 必要なものリスト

都会で10年以上一人暮らしをした者として、下記事には物足りなさを感じます。

★ 新卒1,2年目に自己投資してQoL上がったもの

★ ひとり暮らし用「高くてもこれ買っとけ」リスト

一人暮らしの人向けにお勧めの物とは何か、ネットの一部で盛り上がっているようです。

でも、上の記事の作者は小金があってオシャレな家に住んでいるような層をターゲットにしているのか、
「これだけは、カネがなくても買っておけばよかった!」
という切実な情念が、記事からただよってこないのです。

「これ、必要なのかな、贅沢じゃないのかな……」
と悩んでいる、それほど裕福でもない一人暮らしの人のためにこそ、この手のリストは作られるべきではないのか。
「贅沢じゃないよ! 必需品だよ! 買った方がいいよ!」
と背中を押してあげるような、リストを作りたい。

そう思いまして、下記にリストを作成してみました。

1.除湿機


買ったのは、一人暮らしを初めて5年目だったでしょうか。

築年数の古いアパートに住んでいたためか、いくら清潔にしても、現れる黒いヌメヌメした悪魔にゲンナリしていたとき、ネットで、
「除湿機が効果的」
と絶賛されている記事を読み、購入を決意。

効果テキメンとは、このことでした。築35年の狭い汚い木造アパートなのに、その年から、ゴキブリがまったく現れなくなったのですから!

だから、貧しい人にほどオススメする商品です。過去にも何度か記事にしたことがあります


2.折りたたみベッド


部屋で一番面積を占有するのが、ベッド。それが嫌で、ベッドではなく布団を利用している人も多いようです。

でも、私はオススメしません。なぜなら布団は上げ下ろしのたびに綿の繊維が切れて宙をただようため、部屋がホコリっぽくなるからです。

その上、夜は汗を吸い、日中は押入れにしまわれるために、ベッドよりも湿っぽくて不健康。布団の上げ下ろしも面倒です。毎日のことならば、出来るだけ手間暇かけないほうがライフハック的と言えましょう。

そこでお勧めするのが、折りたたみベッド。折りたためば場所を取りませんし、丈夫です。簡単に移動もできます。これは本当にいい買い物でした。

3.マットレス


さて、上記のベッドに直接、布団を敷いて寝ていた私ですが、数年経って困ったのが腰痛です。

支える板にヒビが入り、腰が沈み込むようになったことや、板の硬さが骨に響いてきたことが原因でしょう。

バカでした。マットなんて必要ない、と思って布団の下に何も敷かなかったことが、敗因です。もしもこれがあれば……と思いながら、いつもアマゾンでこの商品を眺めていました。

今は贅沢をして高価なマットレスを使っていますけれども、上記の物のほうがコストパフォーマンスとしては、いいかもしれません。

4.空気清浄機


私、ハウスダストに弱いアレルギー性鼻炎なので、空気清浄機がないときは、掃除をしますとクシャミが止まらなくなり、ひどい時は翌日休むハメにおちいっていました。

ところが、空気清浄機と、後ほど述べます掃除機のお陰で、クシャミから開放されました。

空気清浄機は、アレルギー持ちには必需品だと思います。


5.掃除機


ダイソンの掃除機です。

CMではよく観ますけれども、それまでは国産を愛用している愛国者なので、買う気はなかったんです。ところがたまたま知人から強力にプッシュされまして、使ってみて……惚れ込みました。

まず、排気が臭くありません。寒い日や蚊の多い夜、窓を閉め切って掃除をする時に便利です。集塵袋がいりません。そして何より、超強力な吸引力。ゴミやホコリが次々に吸い込まれていく様子が目に見えることに感動します。

ダイソンの掃除機は、本当にすごかったです。




以上、一人暮らしの方向けお勧めの商品を5点、紹介いたしました。

ちょっとしたものがあるのとないのとでは、生活の質が大きく異なります。上のリストの中では除湿機がとにかく、絶対買って損がないので、騙されたと思って買ってみてください。

2014年7月10日木曜日

シンガポールの反賭博CMが、逆にギャンブルをあおる

「賭博をしてはいけません」
というシンガポールのCMが、逆に賭博をあおっているという笑い話のようなニュースをロイターが報じています。

★ 反賭博CMで「ドイツ勝利に全財産」、シンガポール啓発運動が誤算
サッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会に合わせてシンガポール当局が展開している反サッカー賭博キャンペーンが、思わぬ「オウンゴール」で苦境に立たされている。
CMに出演した少年の父親がすべての貯金を賭けに投じたというドイツが、8日の準決勝で開催国ブラジルに7-1で大勝。優勝に王手をかけてしまったからだ。

どんなCMだろうと思いまして、探してきたのがこれです。


https://www.youtube.com/watch?v=Sz5lfTqkFpU

「ワールドカップが始まったね。どこが勝つと思う?」
「僕のパパは、ブラジルが勝つと言っているよ」
「そんなことはないよ。アルゼンチンが勝つさ。だってメッシがゴールを決めるから」

「僕の家では全員、スペインを応援しているよ」
子供たちが和気あいあいと話しています。

誰かが、黄色いシャツを着ている少年に、
「アンディ、君はどう思う?」
と水を向けると、元気なさそうに、
「僕はドイツに勝って欲しい」
と吐き捨てるようにつぶやきます。
「どうして?」
と誰かが尋ねます。

そりゃ、不思議に思いますよね。先刻アルゼンチンを応援した少年は、アルゼンチンチームのユニフォームを来ています。その他の少年たちもなんとなく雰囲気で分かります。ところがアンディの来ている服は黄色のTシャツ。ドイツを応援している風には、まったく見えないからです。

すると、アンディは少し間を置いて、一言、
「だって、僕のお父さんが、家の有り金を全部、ドイツの勝利につぎ込んでしまったから」
と答えました。

その深刻な表情を前にして、周囲の友達は全員、声を失ってしまいます。そこに、
「あなたの家庭に、賭博の影響をあたえないでください」
というテロップが流れます。

このCMが作られた背景には、シンガポールで年々深刻化する、ギャンブル依存症の問題があります。

もともとシンガポールの建国の父であるリー・クアンユーは、違法賭博を厳しく取り締まることでしられています。シンガポールでは、「私会党」と呼ばれる暴力団のような組織が、建国前から暗躍してきました。その組織が資金源としていたのが賭博だったので、リー・クアンユーはロトのような合法賭博以外の賭博を徹底的に取り締まってきたのです。

ところが中国人は昔から、大変な賭博好き。道端ではコオロギを戦わせたり鶏を戦わせたりして、周囲はどちらが勝つかを賭ける、という風景が、大昔から街のそこかしこで見られるお国柄でした。

ギャンブルについついのめりこみ、全財産を失ってしまう、という悲劇も多いのです。現にシンガポールでは、低所得者層がギャンブルにのめり込み全財産を失うという悲劇が生じ、大きな問題となっています。このCMは、それに警鐘を鳴らす意味がありました。

ところが、御存知の通り、スペインは早々に敗退しましたし、ブラジルはこてんぱんにやられてしまいました。そして……ドイツは快進撃を続けています。

もしもドイツが優勝しようものなら、この少年の父親は一夜にして大金持ちとなることは間違いありません。

国民に賭博を禁止するどころか、一攫千金の期待を持たせてしまったこのCM。思いもかけない"罪"のために、製作会社は苦境に陥っているようです。
一方、キャンペーンを担当した機関の広報は「(CM出演した少年の父親が)ドイツに賭けたことで、われわれのメッセージに現実味が増した」と苦しいコメントを出している。
……いけないことでしょうが、笑ってしまいますね。