数十年前まで、共産党及び共産主義に影響を受けた人々が、世界中でテロを起こして革命を起こそうとしていました。その残滓に、未だ共鳴する人々がいるのでしょう。
不況が慢性化して、格差が広がると、革命を起こして世の中を作り変えようとする意思のある勢力に、大勢の人々が引き寄せられます。この流れは、いつの時代も変わりません。
ただ、世界的には、貧しい人々の支持を集めているのは共産主義ではなくイスラム原理主義の方です。
昨日、「イスラム国」の勢力拡大についてブログで触れました。日本人の香田証生を殺害したイラクの「聖戦アルカイダ」が前身のこの組織は、アブグレイブ刑務所から受刑者を脱獄させて人々の支持を集めたのが始まりしたが、数年でここまで膨れ上がり、現在はイラクという「国」を手中に収めようとしています。まさに「国盗り物語」。
狂信者の集団の怖いところは、勢力の拡大が急であること。弱小組織だと思って油断していると、数年で国家を掌握するまで急成長することです。その怖さは、数十年前に社会主義国によって世界の半分を支配されていた人類ならばよく知っているはずなのですが。
数十年前の共産主義者とイスラム原理主義者。この2つにはいくつかの共通点があります。
1.貧困層からの支持
数十年前、封建社会が崩壊したり、急速に進む都市化によって、食えなくなった人々から共産主義は支持されました。現代では、グローバリズムによって貧しくなったアフリカや中東の人々から、イスラム原理主義が支持されています。
2.支援する資金源の存在
これが彼らが力をつけている一番大きな要因です。ロシアという世界で最も巨大な大国と、中国という世界で最も人口の多い国が共産化したお陰で、世界中の共産主義者たちは様々なバックアップを受けられるようになりました。
イスラム原理主義者を応援するのは、オイルマネーです。蓄積された資本をイスラムの人々はうまく運用して、莫大な資金が今、彼らの手元にあります。大金持ちの一部には、イスラム原理主義に共鳴する人々がいます。
ところが彼らには世界を動かす力がありません。世界を牛耳っているのは、今も昔も欧米です。この世界秩序に反感を覚えていても、アラブの人々には世界を運営する機会がありません。
ところが彼らには世界を動かす力がありません。世界を牛耳っているのは、今も昔も欧米です。この世界秩序に反感を覚えていても、アラブの人々には世界を運営する機会がありません。
現状を打破したいと思う彼らが資金源となって、過激派が武器や弾薬や食料を購入するのを応援しています。
3.暴力を肯定する思想
マルクスとエンゲルスは『共産党宣言』の中で、「共産主義者は、自分たちの目的が、これまでのいっさいの社会秩序の暴力的転覆によってしか達成されえないことを、公然と宣言する」と書いたがために、その後の過激派の暴力は肯定されました。
同じくイスラム原理主義の根本には、聖戦(ジ・ハード)を肯定するイスラム教創始者のムハンマドの教えがあります。
暴力には、すべての秩序を打ち壊すエネルギーがあります。そして、若い肉体の他には何者も持たない若者たちにとって、その肉体を存分に活用できるのは暴力です。それが肯定される思想は多くの若者にとって、魅力的です。
4.敵はアメリカ
彼らにとって目の上のたんこぶが、アメリカの存在でしょう。世界で最も豊かで、最も強い国であるアメリカが、今の世界の体制を決めています。世界をリードしているアメリカのシステムすべてが、虐げられている人々にとっては憎くて仕方がなくなります。
5.世界に張り巡らされたネットワーク
世界中に仲間がいるのは、心理的に心強いものです。
数十年前、ソ連は「コミンテルン」という国際組織を作って世界中の共産主義者の活動を陰に陽に応援しました。
現代では、イスラム教という世界宗教が張り巡らせた世界中のネットワークが、イスラム原理主義者を応援しています。穏健イスラム教徒と原理主義者を明確に区分することはできず、彼らの垣根は曖昧です。
以上、つらつらと両者の共通点を並べてみました。
読者にとって、日本人とイスラムの関わりが薄いためにあまり身近には感じられないかもしれませんが、実のところ、日本人にとって、イスラム教は決して無縁なものではありません。第二次世界大戦で日本の軍国主義を主導した人物に大川周明という人がいましたが、彼はイスラム研究家としても有名でした。
日本の左翼思想をリードする人物の1人に本多勝一がいますが、彼はイスラム教徒です。
日本の最高の知性と言われた人物に井筒俊彦という上智大学教授がいます。彼は世界的に有名なイスラム学者で、革命前のイラン王立研究所で教授をしていました。
イスラム教は、今後も日本にいろいろな形で流入していくことでしょう。今は細い糸ですが、やがて大きな潮流となることでしょう。
今は冒頭で紹介したように、、日本の不満層のはけ口は、馴染みのあるr共産党などに向かっています。しかし、彼らはやがて、共産党が、それを支えていたパワー(上記の2、3、5)を失っていることに気づくでしょう。そして、世界的な反攻者の潮流に身を投じたいと考えてもおかしくありません。
絶望したサヨクやネトウヨたちが、やがてイスラム教に共鳴して続々と入信していくという悪夢は、絵空事ではありません。今のうちにイスラムについて、知っておくのは無駄ではありません。
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