2014年9月26日金曜日

杉村太蔵は株式投資の新たなスターとなるか

元衆議院議員の杉村太蔵氏が、株式投資で資産1億円を作ったというニュースが話題になっています。

★ 杉村太蔵センセー、華麗なる転身!「バカでも資産1億円」

「議員辞めればただの人」
となる人が多い中で、落選後も「サンデー・ジャポン」などのコメンテーターとして活躍している杉村氏を、
「しぶといな」
と呆れつつ感心していましたが、まさかその間に株式投資で1億円の資産形成に成功していたとは……。
株式投資で多額の利益を上げ、商社を立ち上げて4年間で約1億円の資産を築いた。昨年は1000万円の英高級車ジャガーを購入したという“投資家&実業家”タイゾーに話を聞いた。
「国民の99%はボクをバカだと思っているかもしれませんが、その私が資産1億円となると…、それはみなさんの勇気になると思いますよ」
自身のキャラをわきまえつつ、さらなる高みへ向かおうとする杉村氏に感嘆しつつも、眉に思わず唾しました。

(話ができすぎているんじゃないか)
とどうしても疑ってしまうのです。私の心は汚れているのでしょうか。


広告の技術は進化している

少し話は飛びます。

20年ほど前になるでしょうか。白鳳大学教授の福岡政行氏の講演を聞きに行ったことがありました。
「ちょっとだけ、ウラ話!福岡政行氏」より
某有名宗教団体の実名を挙げつつ、その団体は博報堂に莫大な広告宣伝費を支払い、博報堂は某団体のイメージアップを全面的に支援している、といった内情を、講演で話していました(業界の裏話を聞けるのが、講演の醍醐味です)。

広告代理店では、単なる出版物への広告宣伝を扱うのにとどまらず、教祖の言動、ファッションなど、様々な点の改善策を提案しているのだそうです。

(宗教団体も宣伝する時代なのか)
と驚きましたが、それも今から20年前の話です。今では広告代理店は、もっと多岐にわたる広告宣伝に携わっていることでしょう。

電通や博報堂のような巨大広告代理店ともなると、テレビCMで商品名や企業名を連呼する単純な広告作成だけではなく、業界全体のイメージアップを手がけることで、一企業にとどまらない収益アップにつなげていることなどを、ご存じの方も多いでしょう。

このような試みはすべてうまくいくとは限らず、当たり外れが多いものだそうです。とはいえ数十年も試行錯誤を続けていると、手堅い広告手法も分かってきます。いろいろな手法のうち、確実なのが「スター」を作って、大勢の人にアピールする、という方法だと、私は別の方の講演で聞いたことがあります。誰だったか忘れましたが。


株式投資のスターたち

たとえば2005年、ジェイコム株大量誤発注事件で注目を浴びたB・N・Fこと小手川隆氏。彼は大学中退のニートという立場ながら、株式投資で100万円を210億円にまで増やしました。

あるいは主婦でありながらFXで8億円の資産を築き上げた池辺雪子氏。日本の専業主婦を中心とする個人投資家が、2000年代から国際為替相場に大きな影響力をもたらすようになりました。欧米では畏怖を込めて、彼女たちを「ミセス・ワタナベ」と名づけましたが、その名前の由来となったのが池辺氏だそうです。

2000年中盤、マスコミやネットでたびたび話題となった彼らに憧れて大勢の人が投資を始めました。それは自然発生的なものだったのか? それとも誰かが絵図を描いたのか?

当時、バブルの余波がまだ残っていたので、主婦やニートといった人々は暇と小金がありました。今よりも余裕のあった時代。個人のものとしては些少でも、彼らの人数は多く、集まれば巨額の資金となります。それまで見向きもされなかった層の資金を投資市場へ呼びこむことに、上記のスターたちが大きく寄与しました。

FXやネット株取引は今でこそ当たり前ですが、始まった頃はまだ信用がなく、参加者も少なかったのです。その状況を変えたのは、小手川氏を始めとする大成功者のお陰です。無論、彼らの成功は実力や才能によるものでしょうが、それを後押しした大勢の人々、利用しようとした人々が背後にいたはずです。2ちゃんねる発の自然発生的なムーブメントだと意識している人が多いと思いますが、今では2ちゃんねるの相当初期から、2ちゃんねるの運営陣が印象操作のために書き込みを操作していたことが明らかになっています。


今度狙われる財布とは

当時、マザーズやナスダック(現・ジャスダック)が開設されたばかりで、これまでの株式投資の客層とは異なる層にアピールして新規投資を呼びこむ必要がありました。ニートや主婦といった人々がその頃大勢参入しましたが、今でも儲かっている人はどれほどいるのでしょう?

一部は儲けましたが、大多数の人々は有り金をそっくりと巻き上げられて、青息吐息といったところでしょう。

さて、2014年。

オリンピックも数年後には控えています。安倍首相は、株式市場の活性化を目論んでいます。たくさんの投資を呼び込まなくてはなりません。

では、日本政府や証券会社が次に狙う、新たに株式投資に挑戦してくれる人々とは、どのような人々なのでしょうか。

すぐに思いつくのは退職したばかりの団塊世代です。しかし、彼らは年齢が高く、概して保守的で、したたかです。バブル崩壊の記憶が根強く残っています。広告に踊らされ、熱狂の起爆剤となる可能性は少ないでしょう。彼らにアピールしても、あまり期待できそうにもありません。

では、どのような人々なのか? やはり経験や知識の少ない若い層でしょう。

もしも、杉村太蔵氏が、株式投資の新たなスタートして大手広告代理店の目に止まったのだとしたら。彼が体現する人物像こそ、投資をして欲しい対象なのかもしれません。

たとえば。

1970年代生まれの、団塊ジュニアや真性団塊ジュニアと呼ばれる世代、いや、氷河期世代と呼ばれる1970年から1982年生まれの世代。この層は、就職で困難に遭遇したものの、近年になってようやく落ち着き、結婚もぼつぼつとし始め、生活に余裕が出てきています。

彼らの余剰資金を狙うため、彼らにアピールするための「スター」として、杉村氏はとても適切なように思います。

「あいつに出来るのならば、私にだってできる」
……そう勘違いする人は多いはず。

今回の杉村太蔵氏に関連するニュース。一個人の本出版を報じるものにしては、扱いが大きく、いろいろな媒体で取り上げられているのが気にかかります。何らかの意図が背後にあるとしたら、それに騙されないようにしないといけません。


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